最も身近で分かりやすいDXの例は、スマートフォンだと考えている。
このデバイスが登場したとき、私たちはその先進性に驚かされたが、スマートフォンを扱うには、携帯電話を扱うときの手の動きも、そして考え方や価値観そのものも変容させなくてはならなかった。だから、最初のうちは「スマホなど要らない」「ガラケーで十分」という人も多かった。スマホ決済なども、DXの好例だろう。慣れない人はどうしても「現金でいいじゃないか」というふうに考える。
例えばレコードがCDに取って代わるぐらいなら、再生する機械を変えるだけでよかった。しかし機械といった道具を変えるだけでなく、その道具によって私たちの考え方や行動パターンまでも変えなくてはならないものは、誰もが煩わしく思うのも当然だ。だから、ビジネスの在り方、経営そのものをDXによって変えようとするとき、多くの人はとても面倒だと受け止める。
コロナの影響によって、多くの企業がテレワークを余儀なくされている。これを受けて日立製作所は「半分在宅」を宣言し、富士通や資生堂や「ジョブ型雇用」を促進すると表明した。これらの例からしても、テレワークの流れはもう止められない。オンライン会議やオンライン商談、オンライン研修なども多くの企業が取り入れている。
しかし、スマホやキャッシュレスに多くの人が抵抗したように、ビジネス環境のDXを拒絶している人もまだまだ多い。
「パソコンの画面越しで会議なんかできるか!」――私のクライアント企業の中にも、そのように言う専務がいた。彼は続けて「会議というのは、ちゃんと顔を合わせてやるものだ。そうじゃないとうまくいかない」と言い張った。「Zoomを使えば、全員の顔がリアルよりも近くではっきり見えますよ」と社長が言っても、専務は頑として自分の考えを曲げない。
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