都銀再編時に「ごみ箱」構想を持っていた金融庁と地銀救済で手を組むSBIホールディングスは天使か、悪魔か?呉越同舟の地方創生(4/4 ページ)

» 2020年06月23日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]
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SBIは天使か、悪魔か

 5月に岡三証券グローバルリサーチセンターの高田創理事長が配信したレポートでは、「コロナショックは中小の7業種(陸運、小売、宿泊、飲食、生活関連、娯楽、医療福祉)に大きなダメージを与え、これらの多くは地域金融機関の主要取引先である」との指摘がありました。日銀の発表によれば、4月の全銀行の融資実行額は前年同月比で20%増とのことで、地域経済の安定化・回復に向け、地銀はかつてないほど精力的に地元企業を支える融資協力をしていることが想像に難くありません。しかし上記レポートが的を射たものであるなら、数カ月から1年後に経営破綻を余儀なくされた取引先向け融資が続々不良債権化することも考えられ、そのときにSBIがどのように動くのかは非常に気になるところです。

 有事を受けての金融再生の過程において、「再生箱」が果たす役割は金融秩序の安定化、ひいては日本経済の安定的な回復基調確保に向けて非常に重要であることは、20年前の金融危機脱却に向けた都銀を主役とした金融再生時に立証済みです。ここ数年の地銀危機をさらに助長するコロナショックが起きた今、地銀「再生箱」づくりの役割を買って出たSBIの動向次第で日本経済の先行きは大きく影響を受けるといってもいいでしょう。SBIは果たして地銀主役の金融再生にとって、ひいては日本経済のコロナショックからの脱却にとって、文字通り救世主的天使であるのか、はたまた自社利益を貪るだけの悪魔なのか。コロナ禍の長期化によって、程なく本当の姿が見えてくるのではないでしょうか。

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役

横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時は旧大蔵省、自民党担当として小泉純一郎の郵政民営化策を支援した。その後営業、マーケティング畑ではアイデアマンとしてならし、金融危機の預金流出時に勝率連動利率の「ベイスターズ定期」を発案し、経営危機を救ったことも。06年支店長職をひと区切りとして銀行を円満退社。銀行時代実践した「稼ぐ営業チームづくり」を軸に、金融機関、上場企業、中小企業の現場指導をする傍ら、企業アナリストとしてメディアにも数多く登場。AllAbout「組織マネジメントガイド」役をはじめ、多くのメディアで執筆者やコメンテーターとして活躍中。


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