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» 2020年07月17日 12時00分 公開

アニメ業界の「病巣」に迫る【後編】:アニメ版『ジョジョ』の総作画監督が指摘「Netflixで制作費が増えても、現場のアニメーターには還元されない」 (2/5)

[伊藤誠之介,ITmedia]

Netflixで制作費が増えてもアニメーターには還元されない

――海外といえば、最近はNetflixや中国企業といった海外資本で、アニメ業界が潤っているという話も聞こえてきますが。そのことは、アニメーターさんにとってはプラスになっているのですか?

 私の見える範囲では、あまり変化はないですね。Netflixの作品だと予算が通常の2倍ぐらいになっている、みたいな話を聞きますけど、だからといって、アニメーターの仕事の単価が2倍になっているわけではないし。制作会社のほうもそんなにウハウハしている感じもなくて、相変わらずツラそうだなぁと。

――制作会社のほうも景気が良くなった感じではないとすると、どこが儲(もう)かっているんでしょうか?

 話をフワフワと聞いた限りでは、デジタル化も含めた設備投資だとか、それこそ労働基準法への対処も含めて、制作会社が態勢を整える部分に回っているのかなと。そもそも赤字のところも多いですから。

――景気よく入ってきた分は、赤字を埋めただけで終わっていると?

 言ってしまえば、砂漠に雨が降ってきたんだけど、どんどん砂に吸い込まれていって、それで植物が育つほどではなかったんでしょうね。そういう大きな話が、ある程度定期的に来るようになると、また違うのかもしれないですけど。

――日本のテレビアニメの場合は、放送しながら作品を作っているのが大半だと思います。それに対してNetflixは、1シーズン13話なら13話分、全部完成させてからまとめて配信していますよね。だから作業としては大変じゃないかと思うのですが?

 大変ですよね(笑)。納期とかの契約も、おそらく日本のテレビ局よりは厳しいはずですし。私はプロデューサーではないので、そのあたりは詳しくは分からないですけど。

 ただ、Netflixが全部のお金を出して作った作品は、当然NetflixのIPになるんですけど、制作会社が自分で作って、後からNetflixに持ち込んだものに関しては、制作会社がIPを持てるんです。

――最初の1年間とかの放映権をNetflixが独占するのにお金を払って、後から地上波で放送したりするパターンの作品ですね。

 Netflixが完全出資している作品は、制作費が2倍、3倍という話になったりするんだけど、その一方で自社ではIPを持てないし、グッズもDVDも出せない。そうなるよりは自分たちで作って、Netflixでも配信してその分のお金だけをもらうほうがいい、という会社も多くて。中長期的に作品を育てていきたい場合は、Netflixに作品を取られてしまうと意味がないですから。

 ただ、私たち下請けで作っているアニメーターや制作スタジオとしては、どうせIPが持てないのは一緒なんですけどね。

――ではNetflixがやってきても、現場としてはあまり変わらない?

 あんまり変わらないですね。そのへんの契約的なものは、あくまでNetflixと委員会と元請の制作会社との間の話であって、私たちフリーランスのアニメーターからは見えないので。「Netflixだからお金がいいんじゃないの?」って聞かれるんですけど、どういう契約なのかによるので一概には言えない、というのが個人的な感想ですね。

 Netflixだけじゃなくて中国のほうも、中国政府の検閲で全部NGが出ることも増えて、作品を作れなくなったという話を聞きますし。ビジネス系の人たちは、欧米や中国からの話を「黒船じゃないですか!」って持ち上げるんだけど、そこには当然リスクがあるんです。

phot 西位さんは「Netflixがやってきても、現場としてはあまり変わらない」という(写真提供:ゲッティイメージズ)

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