――西位さんから見て、今、アニメーターになりたいという人のことをどう思います?
私だったら絶対にならないだろうなと(笑)。それだけアニメが好きというのはありがたいことだと思いますけど。
いろんな専門学校にも行くんですけど、アニメーター科よりもイラストレーター科のほうが、人数が多いですね。アニメーター志望の子はおとなしい人が多いんですよ。イラスト科の子はワーッと寄って来るんですけど、アニメの子たちはあんまり来ないから、大丈夫かなと思ったりします。
もともと絵描きって、交渉がヘタだとか、そういうことをやりたくないから絵を描く仕事を選んだ人も多いので、アニメーターを社員にして、そういう交渉をさせない業界になればいいのかもな、と思います。
――作画スタジオのような形態が生まれたのは、もともとはそういう理由だったんじゃないかと思うのですが。
本当にそう思います。スタジオの先輩に「何で辞めないんですか?」って聞いたら、「面倒な交渉を会社が肩代わりしてくれる」と言っていたので。私もスタジオにいて、別に悪いことがあったわけじゃないんですよ。ただ、アニメ業界外の人に、こういう業務形態だったって話すと、ビックリされるだけで(笑)。
でも作画スタジオ自体、昔よりは減ったんじゃないですか。私がいたところも解散しちゃったし。フリーランスで、個人で、在宅でやっている人が増えて。
――そうなんですね。
アニメの場合、作品が動いている期間はいいんですけど、動いていないとお金がピタッと止まるわけじゃないですか。その間も社員を雇わなくちゃいけないというのが、全ての会社にとってツライところなんだろうなと。
結局は、仕事の単価が安いというのが原因だと思うんです。予算がもっと増えたら、スタジオも社員として囲えるのかなと。といっても、私みたいに20年もフリーランスをやってきた人間が、今さら社員になって会社の言うことを聞くのはツライものがあるんですけど。でも、仕事を覚えている途中で収入の少ない新人を社員化するのは、大事だと思いますね。
とにかく新人の育成をがんばってもらいたいです。要は動画ですね。そこから立て直さないかぎりは、無理だと思いますから。
――海外の作品やゲーム業界なども含めて、西位さんが今いちばん「アリ」だと思うのは、どの方向性のお仕事なんですか?
全部アリですよ。全部アリなんだけど……その中で言うとアニメは、一度絶望したのもあるんですけど、今の作り方も含めて、ついていけないなというのがあって。それに比べれば、どれもアリです(笑)。
アニメに関しては、かなり混乱期ですよね。デジタル化も含めて。なので、もうちょっと落ち着くまで待つか、もしくは自分流のスタイルを確立して、個人で何とかするかですね。このグチャグチャになっている時期に、他の人の言うことを聞いていたら、どこにたどり着くか分からなくなるというのがあって。
自分としては正直、絵さえ描ければなんとかなるので、そこを基点にしていこうかなと。アニメにこだわると大変なことになりそうだなと。自分も40歳なので、そろそろ老後も考えないといけないので。
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