――本来であれば、現場のクリエイターである西位さんにこういった話をお聞きして、問題の矢面に立たせてしまうのも、個人的にはどうかなと思っているんです。
私も悩んだんですけど、今、メインで作品を持っていないというのが大きいですね。これが『ジョジョ』をやっていた最中だったら、『アニメーターの仕事がわかる本』は絶対に出していないと思います。いろんな人に迷惑が掛かってしまうので。私は今、アニメ業界から一歩引いている感じになっていて、作品に直接迷惑が掛かるわけではないので、まぁいいかなと。
――では西位さんが、この問題についてここまで発言する理由は?
「怒り」ですよね。自分以外の人も含めて、みんながこんなにがんばっているのに、何で報われないの!? っていう。好きで始めた仕事なんだから、もうちょっとキラキラしててもいいはずなのに。
基本的には、誰も敵ではないんです。「作品の人気が出てヒットしたらいいな」というのは、会社も現場のスタッフも、みんなが思っていることなので。でもそれだけに、難しいですよね。
――西位さん自身、子どもの頃に見た『聖闘士星矢』に憧れて、今ではNetflixの『聖闘士星矢: Knights of the Zodiac』でキャラクターデザインを手掛けるまでになっているわけですよね。
そうなんです。私自身、憧れた作品があってアニメ業界に入ってきて、自分のやりたいことをかなえてきたはずなのに、それで残ったのが「怒り」だというのに腹が立つんですよ。
できればアニメファンの人たちに、今の実態を知ってほしいんです。テレビの放映が落ちたら「いい決断だ」「応援しています」と、ファンのみなさんは優しいコメントをくれるけど、本当は大変なことなんです。制作会社はお金がなくなっちゃうんですから。
なので、ファンのみなさんにも今のアニメの実態を知ってほしいですし、そんなファンの人たちのためにも、企業や制作会社はアニメの作り方について、もう少し考えてほしいなと思います。
(了)
アニメ版『ジョジョ』の総作画監督が語るアニメーター業界の「過酷な実態」
「あつ森」で“天国”の任天堂、PS4買い控えで“地獄”のソニー 決算数値からひも解く
最終赤字6700億円でも「手元資金は十分」とうそぶく日産 問われる内田社長のリーダーシップ
「これさぁ、悪いんだけど、捨ててくれる?」――『ジャンプ』伝説の編集長が、数億円を費やした『ドラゴンボールのゲーム事業』を容赦なく“ボツ”にした真相
『ジャンプ』伝説の編集長が、『ドラゴンボール』のゲーム化で断ち切った「クソゲーを生む悪循環」
プロゲーマー「ウメハラ」の葛藤――eスポーツに内在する“難題”とは
トヨタ自動車、来期営業益8割減の衝撃 「コロナ恐慌」が大手企業も飲み込む
ドラゴンボールの生みの親 『ジャンプ』伝説の編集長が語る「嫌いな仕事で結果を出す方法」
『ジャンプ』伝説の編集長は『ドラゴンボール』をいかにして生み出したのか
『ジャンプ』伝説の編集長が語る「21世紀のマンガ戦略」【前編】
『ジャンプ』伝説の編集長が語る「21世紀のマンガ戦略」【後編】
ジャンプ「伝説の編集長」がFGO誕生に関わった“黒子”、電ファミニコゲーマー編集長と考えた「ドラゴンボールの見つけ方」
ジャンプ「伝説の編集長」がFGO誕生に関わった“黒子”、電ファミニコゲーマー編集長と語る「才能を“超一流”に育てる極意」
「最近の若い奴は」と言う管理職は仕事をしていない――『ジャンプ』伝説の編集長が考える組織論
“元祖プロゲーマー”高橋名人が明かす「日本のeスポーツの課題と戦略」
【独占】ひろゆきが語る「“天才”と“狂気”を分けるもの」
ひろゆきが斬る「ここがマズいよ働き方改革!」――「年収2000万円以下の会社員」が目指すべきこと
ひろゆきが“日本の未来”を憂う理由――「他人は変えられない」
滝沢秀明がジャニー喜多川の「後継者」となった理由
ホリエモンが政治家に頭を下げてまで「子宮頸がんワクチン」を推進する理由
「持続可能なゲームメディア」の未来像とは 電ファミニコゲーマー・平編集長を直撃Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング