――本来であれば、現場のクリエイターである西位さんにこういった話をお聞きして、問題の矢面に立たせてしまうのも、個人的にはどうかなと思っているんです。
私も悩んだんですけど、今、メインで作品を持っていないというのが大きいですね。これが『ジョジョ』をやっていた最中だったら、『アニメーターの仕事がわかる本』は絶対に出していないと思います。いろんな人に迷惑が掛かってしまうので。私は今、アニメ業界から一歩引いている感じになっていて、作品に直接迷惑が掛かるわけではないので、まぁいいかなと。
――では西位さんが、この問題についてここまで発言する理由は?
「怒り」ですよね。自分以外の人も含めて、みんながこんなにがんばっているのに、何で報われないの!? っていう。好きで始めた仕事なんだから、もうちょっとキラキラしててもいいはずなのに。
基本的には、誰も敵ではないんです。「作品の人気が出てヒットしたらいいな」というのは、会社も現場のスタッフも、みんなが思っていることなので。でもそれだけに、難しいですよね。
――西位さん自身、子どもの頃に見た『聖闘士星矢』に憧れて、今ではNetflixの『聖闘士星矢: Knights of the Zodiac』でキャラクターデザインを手掛けるまでになっているわけですよね。
そうなんです。私自身、憧れた作品があってアニメ業界に入ってきて、自分のやりたいことをかなえてきたはずなのに、それで残ったのが「怒り」だというのに腹が立つんですよ。
できればアニメファンの人たちに、今の実態を知ってほしいんです。テレビの放映が落ちたら「いい決断だ」「応援しています」と、ファンのみなさんは優しいコメントをくれるけど、本当は大変なことなんです。制作会社はお金がなくなっちゃうんですから。
なので、ファンのみなさんにも今のアニメの実態を知ってほしいですし、そんなファンの人たちのためにも、企業や制作会社はアニメの作り方について、もう少し考えてほしいなと思います。
(了)
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