アニメ版『ジョジョ』の総作画監督が指摘「Netflixで制作費が増えても、現場のアニメーターには還元されない」アニメ業界の「病巣」に迫る【後編】(5/5 ページ)

» 2020年07月17日 12時00分 公開
[伊藤誠之介ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

今のアニメ業界の実態を知ってほしい

――本来であれば、現場のクリエイターである西位さんにこういった話をお聞きして、問題の矢面に立たせてしまうのも、個人的にはどうかなと思っているんです。

 私も悩んだんですけど、今、メインで作品を持っていないというのが大きいですね。これが『ジョジョ』をやっていた最中だったら、『アニメーターの仕事がわかる本』は絶対に出していないと思います。いろんな人に迷惑が掛かってしまうので。私は今、アニメ業界から一歩引いている感じになっていて、作品に直接迷惑が掛かるわけではないので、まぁいいかなと。

――では西位さんが、この問題についてここまで発言する理由は?

 「怒り」ですよね。自分以外の人も含めて、みんながこんなにがんばっているのに、何で報われないの!? っていう。好きで始めた仕事なんだから、もうちょっとキラキラしててもいいはずなのに。

 基本的には、誰も敵ではないんです。「作品の人気が出てヒットしたらいいな」というのは、会社も現場のスタッフも、みんなが思っていることなので。でもそれだけに、難しいですよね。

――西位さん自身、子どもの頃に見た『聖闘士星矢』に憧れて、今ではNetflixの『聖闘士星矢: Knights of the Zodiac』でキャラクターデザインを手掛けるまでになっているわけですよね。

 そうなんです。私自身、憧れた作品があってアニメ業界に入ってきて、自分のやりたいことをかなえてきたはずなのに、それで残ったのが「怒り」だというのに腹が立つんですよ。

 できればアニメファンの人たちに、今の実態を知ってほしいんです。テレビの放映が落ちたら「いい決断だ」「応援しています」と、ファンのみなさんは優しいコメントをくれるけど、本当は大変なことなんです。制作会社はお金がなくなっちゃうんですから。

 なので、ファンのみなさんにも今のアニメの実態を知ってほしいですし、そんなファンの人たちのためにも、企業や制作会社はアニメの作り方について、もう少し考えてほしいなと思います。

(了)

phot Netflixで西位さんが手掛けた『聖闘士星矢: Knights of the Zodiac』は海外でも人気だ(同作のキャラクター「シオン」のコスプレをする人、写真提供:ロイター)
前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.