新型コロナウイルスの感染拡大と共に、ドライブスルーに注目が集まっている。
緊急事態宣言によって、感染を恐れた顧客が店内飲食を避けるようになった。その結果、人との接触の機会が少ないテークアウト、とりわけドライブスルーに強い業態のみに売り上げが集中したからだ。
上場している外食チェーンの既存店売上高を見ると、コロナ禍で前年同月を上回ったのはケンタッキーフライドチキン(4月は133.1%、5月は137.6%、以下同)、マクドナルド(106.5%、115.2%)、モスバーガー(103.7%、112.2%)の3社のみだった。
既存店売上高が3割増と驚異的な伸び率となったKFCによると「国内約1130店のうち、約400店でドライブスルーを実施している。緊急事態期間中、ドライブスルーの伸び率が最も高かったのは確か。ドライブスルーをテーマにしたCMや、500円ランチなど普段使いできるセットを強化してきた効果もあった」とのこと。
マクドナルドでは、「国内2900店のうち、ドライブスルーは半分以上の約1500店で実施している。お待たせしないスピードもサービスの重要な要素と考え、クルーは店内と変わらないホスピタリティ提供に努めている」と、接客時の心構えによって顧客満足度が高くなったと強調した。また、トミカなどとコラボしたハッピーセットの企画も強力だった。
モスでも「国内約1280店のうち、ドライブスルーは半分ほどの約600店で設置している。4月頃よりドライブスルーの売り上げは1.5倍に増えていて、全売り上げの約3割がドライブスルーになっている」としており、ドライブスルーが業績アップに大きく寄与している。
丼系の吉野家(96.0%、92.7%)、かつや(89.6%、97.7%)、すき家(88.1%、90.8%)は、もう少しドライブスルーを強化していれば、前年並みの売り上げを保持できたと推定される。
吉野家では、国内約1200店のうち約260店でドライブスルーを併設している。郊外であまり強いチェーンではないが、最近オープンした郊外型店ではほぼ設置するようにしているという。「通常は3割あるテークアウトの売り上げが、4月と5月は6〜7割になっていた。正確にデータを取ったわけではないが、体感としてドライブスルーも急増した」(吉野家・広報)としている。
コロナ禍が猛威を振るう状況では、ドライブスルーが有効な対策になると痛感した外食各社では、新規に導入する動きが加速。くら寿司、幸楽苑などといったチェーンが、チャレンジしている。
そればかりか、レストランやホテルに食材を販売する生鮮卸が、外食・宿泊需要の急激な縮小で余った商品をドライブスルーで販売するために、八百屋、肉屋、魚屋を続々とオープンさせている。そして、しっかりとリピーターを獲得し、定期的に販売する店に進化している。コロナ禍を逆手に取り、花開いたさまざまなドライブスルーの試みを紹介して行こう。
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