コストコは1店舗の売り上げが208億円ほどあります(筆者計算値)。つまり日本では26店舗で約5200億円の年商となります。
1店舗あたりの売り場面積はおよそ9300平方メートル(約2800坪)です。小売業の代表的な効率指標である年間1坪当たり売上高(年坪≒坪効率)に換算すると740万7000円です。日本の一般的な食品スーパーの坪効率が294万円ですから、2.5倍の効率をたたきだしています。
地方の郊外に立地して、都心の百貨店並みの坪効率をあげているのですから驚きです。
立地は郊外で、建物は倉庫型。華美な装飾はほとんどなく、店内にはしゃれたシャンデリアなどもありません。接客して売り込んでいるわけではなく、基本はセルフ販売です。客が自ら、縦102センチ×横122センチの専用パレットから商品を取り出し、それをカートに載せて運ぶのです。
おもてなしを最善とし、店には接客の要素を強く求めてきた日本で、このような店が一般的な店の倍以上の効率をあげられるまでにはなったのは一体なぜなのでしょうか。
そのカギは同社の理念にありました。
コストコが創業以来掲げる倫理規定である「Five Guiding Principles」という5つの理念(経営指針)があります。同社はこれをひたすら守り続けているからこそ、経営の軸がブレずに、世界中で上手な経営ができていると言えます。その5つとは以下のような指針です。
【Costco Code of Ethics】
1.Obey the law.(法の順守)
2.Take care of our members.(会員を大切にすること)
3.Take care of our employees.(従業員を大切にすること)
4.Respect our suppliers.(取引先に敬意を表すること)
5.Reward our shareholders.(株主に還元すること)
ここでは特に上記の2〜4に関連するポイントを整理してお伝えします。
日本の女性から圧倒的な支持を得ている理由は、「会員のために徹底的に安く商品を提供する」というポリシーによって実現しているその価格設定にあります。
1店舗の売り場面積は約1万平方メートル。食品スーパーの平均の10倍以上あります。
ところが取扱商品アイテム数は約4000アイテム。日本のコンビニの平均取り扱いアイテム数とほぼ同じ、イオンなどのGMSの3分の1以下です。
しかし、この絞り込みによって1品当たりの販売金額を増やすことが可能となります。
1アイテム当たりに換算すると、日本だけでも1アイテムで1億3600万円の年間売り上げです。コストコ全社で言えば、1アイテム当たり約40億円の売り上げとなります。
メーカーからすれば、1アイテムだけでもコストコに納品できれば、年間で40億の売り上げになるわけですから、納入原価が厳しくとも、コストコとはぜひ取引をしたいと考えるのは当然です。
結果的に、日本では卸などの中間流通を通さないと取引しないという慣例を打ち破り、メーカーとの直接取引を実現させ、中間コストを省いて、その分、販売価格を抑えることに成功しました。
そのため、コストコは商品を市場価格より20%ほど安く提供できています。この圧倒的な価格力こそがコストコが女性に支持されている最大の理由です。
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