コストコは「もうけすぎないこと」を徹底しています。前述したように、販売力がこれだけ高まると、もっともうかるように取引条件を改定したり、自社のPB比率を極端に上げたりと、エゴむき出しになることもあります。しかしコストコは、取引先にももうけてもらいたいと考えて商売をしています。
コストコでは一定以上の利益はのせないことが社内規定で決まっています。さらに、日本のコストコで売れれば、世界のコストコに広がる可能性がある。これは取引先にとっては大きな魅力です。これも全て取引先に敬意を表するというコストコの理念に沿って商売をしていることが、取引先の共感につながり、商売が広がっていった理由です。
結果的に、日本の店舗には世界から集まったさまざまなメーカーの商品やコストコのPBだけでなく、日本のメーカー・ブランド商品も多数並ぶようになり、品質に特に厳しい目を持つ日本の女性消費者を虜にしたのです。
取引先を大切にしたことが、会員にも支持されたということで、コストコの考え方がさまざまな人たちに共感され、結果としてコストコファンを20年かけて増やすことになったのです。
会員制というしっかりとした基盤を持ち、それを背景とした強大な仕入れ力、そしてローコスト運営による経費の低減による効率的な事業運営。
「会員の皆様への可能な限りの低価格」を事業の柱にし続けられる同社の工夫です。
1999年、コストコの1号店が福岡県糟屋郡の久山(ひさやま)に出店した時に私が見たコストコは、まだ米国型の、いわゆる「倉庫型の卸売店舗」でした。
しかし最近のコストコは、日本市場に見合った、日本ならではの「小売りのテーマパーク」へと進化しているように思います。
客を楽しませるための自社の独自性にブレがなければ、コストコはまだまだ日本市場で伸びていくのではないかと私は思います。
コストコの理念経営。私たちが学ぶべき点が多い企業です。
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。
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