古典的な手口で「30億円」! なぜコロワイドの会長はコロッと騙されたのかスピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2020年07月28日 09時27分 公開
[窪田順生ITmedia]

日本社会の「弱点」

 では、それを踏まえて、「M資金」という超古典的詐欺は、日本社会のどんな「弱点」をついているのか。いろいろなご意見があるだろうが、筆者は日本の経営者が「国からの支援」に依存し過ぎているからではないかと考えている。

 要するに、日本の経営者の間に「会社経営は大変な仕事だから国から手厚くサポートされて当たり前」という考えがまん延しているため、「国が有望企業や基幹産業に対して、非公式に行っている融資に、あなたが選ばれた」なんて眉唾な話に疑いなく飛びついてしまうのではないか。

 そう考えるのは、まずひとつに「政策金融」の過剰ぶりがある。少し古いデータだが、経産省や内閣府職員による「先進4カ国における政策金融について」というレポートがある。そこで注目すべきは、政策金融規模(中小企業向け信用保証を含む)の対名目GDP比だ。米国が5.7%、英国も5.8%、ドイツ17.0%、フランス9.1%と総じて政策金融の役割が限定的な中で、日本だけが27.2%(139.7兆円)と突出している。この傾向は今もそれほど変わっていない。

 つまり、日本は主要先進国の中でも圧倒的に「経営者に国が融資をするのは当たり前」というカルチャーが強い国なのだ。

 これが「M資金」詐欺のカモを量産している可能性はないだろうか。つまり、いつまでも子どもや孫に世話を焼きたがる親と、経済的自立のできない子どもという親子関係が振り込め詐欺の遠因になっている構図とまったく同じで、何かとつけて企業に手を差し伸べたい政府と、国から手厚い支援を受けるのが当たり前だと考える経営者の関係が、「M資金」のような詐欺を生み出しているのだ。

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