古典的な手口で「30億円」! なぜコロワイドの会長はコロッと騙されたのかスピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2020年07月28日 09時27分 公開
[窪田順生ITmedia]

「基幹産業育成資金」とは

 バカバカしいと思うだろうが事実、「M資金」のような話に飛びつく経営者の多くは「オレに対して日本政府が手を差し伸べるのは当り前だ」くらいに考えているのだ。

 今から15年くらい前、ある詐欺事件を追っかけていたら、企業経営者に「M資金」による融資を持ちかけている男につながった。彼は自分が関わっているものは、旧日本軍からGHQが押収した隠し資産などと言われている「M資金」とはまったく異なるものだと強調して、こんなことを言っていた。

 「今時、M資金なんて言っているのはだいたい詐欺師。こちらはそういう怪しい話ではなく、財政法第44条に基づいて、戦後日本の発展を裏から支えてきた”基幹産業育成資金”という非公式ながら立派な政府系金融です。ただ、一部の優良企業だけに融資する特殊性から”マルトク資金”と呼ばれ、世間には伏せられている。これがいつの間にか、都市伝説のM資金と混同されたわけです」

 そう、コロワイド会長も引っかかった「基幹産業育成資金」なる概念は、15年以上も前からその世界では知られていたのだ。

(出所:ゲッティイメージズ)

 男が言うには、この「基幹産業育成資金」は、日本銀行が外国債の金利とドル貯蓄による金利、さらにIMF(国際通貨基金)の分配金を秘かに貯めてきた「裏金」で、日本経済の発展に寄与する人物に対して、最大1兆円という巨額資金を破格の低金利で無担保融資をしてくれる、というものらしい。外務省や大蔵省のOBなど5人で編成される事務局が、この融資を受けるに値する人物の選定を行い、ある日突然、融資を持ちかけるという。

 「これまで自動車や家電など戦後の復興を支えた企業の経営者はほぼ例外なくこの資金を受けてきました。NTTも民営化する際に受けましたし、最近では、ソフトバンクの孫さんもそうですね」

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