「カンブリア宮殿」の発言を受けて、「だったらお前が大学をつくって人材育成してみろ!」と批判する人たちもいたが、実はとっくにそちらへ参入していたというわけである。
という話を聞いても、なお永守会長への怒りがおさまらない方もたくさんいらっしゃるだろう。「大学経営にのり出したのならなおさら、教育は企業のためにあるべきではないことを勉強しろ!」とか「企業の即戦力を育てる就職予備校になったら、もはやそれは大学ではない!」という声が聞こえてきそうだ。
お気持ちは、よく分かる。が、その一方で、企業側が「即戦力になる新卒」を求めることは、そんなに悪いことなのかしらと思ってしまう部分もあるのも事実だ。海外に目を向けると、企業が大学を卒業した若者たちを採用するうえで最も重視しているポイントは、「即戦力になるか否か」だからだ。
専攻や研究内容など、大学で学んだことが自社で生かせるのかどうかが大きなポイントになる。また、職種によっては実務経験がないと話にならないので、多くの学生が長期休暇にはインターンシップに参加する。もちろん、成績もガッツリ重視される。つまり、世界では、企業が「即戦力の新卒」を求めても世間から石を投げられることはなく、大学生たちも「即戦力」を目指して勉学だけではなく実務経験も重ねているのが当たり前なのだ。
しかし、ご存じのように、日本はそうではない。企業が重視をするのは、大学で何を学んだかとか実務経験ではなく、コミュニケーション能力や協調性。そして何よりも「2〜3年でサクっと辞めないで、上司の命令に素直に従ういい組織人になれるか」が大きなポイントになる。
「子どものころからこういう仕事をするのが夢でした」なんて「思い」をぶつけたり、「アメフト部でコーチの命令は絶対に従ってました」とか「海外でボランティアをして見聞を広めました」なんて実務と関係のない自己PRで採用をされる日本の大学生は、世界的にみてもかなり「異常」なのだ。
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