長期的に円高の可能性はあるかKAMIYAMA Reports(1/3 ページ)

» 2020年08月11日 14時24分 公開
[神山直樹日興アセットマネジメント]
日興アセットマネジメント

 米ドル(対円)は短期的に大きな変化はないと想定している。弊社の2021年6月予想は1米ドル=108.50円(以下、1米ドルを省略)である。15年11月以降のトランプラリーでいったん100円程度から118円程度まで米ドル高となり、その後はおおむね105〜115円の範囲内で推移している。もちろん為替を予想することは難しいが、現時点では、今後もこの範囲を大きく逸脱すると考える理由が見当たらない。

 コロナ・ショックは、短期的に米ドル安・円高要因となり、日経平均株価が1万6500円程度まで下落するときに、米ドル(対円)も一時102円台をつけた。しかし、市場が落ち着くと、110円程度に戻る時期もあった。

米ドル(対円)の推移

 その後、米国の新型コロナウイルスの感染拡大で、経済活動の再開が遅れる懸念もあり、米国長期金利が0.5%前後に低下するとともに、米ドル(対円)もこれまでの範囲内で米ドル安の水準で推移している。

 今後のメイン・シナリオは、先進主要国で感染者数増加が続いても、これまでの経験や対策などから、医療崩壊は起きることなく全国的なロックダウンは行われないと想定する。地域ごとの対応は続くが、全体として緩やかな回復が続こう。リスクは、米国が再び全面的に経済活動を停止する事態が起きることであり、その場合は米ドル安・円高が一定の範囲から逸脱して、104円を下回る米ドル安が継続する恐れはある。

 コロナ・ショックに伴う世界主要国の金融政策対応はおおむね似ている。特に、政策金利はコロナ・ショックでほとんどの中央銀行が0%程度にせざるを得なくなり、コロナ・ショックから経済が立ち直るまでは、政策金利の低位安定が続くと予想される。

 さらに、FRB(⽶連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)、日銀など中央銀行による資金供給を行っており、長期金利の上昇に政策的な歯止めがかかっている。今後、各国のコロナ対応がある程度時期を同じくする限り、政策変更による為替市場の変動は最低限に抑え込まれるとみている。

 実質金利の変動は、短期的な為替相場の変動の説明には向かないと考えている。コロナ・ショックと回復のプロセスで、短期的なデフレもしくはインフレのように見える時期を繰り返し、物価は当面不安定になるだろう。それゆえ、統計発表などでボラティリティが増す可能性はあるが、強い方向性を与えるとはみていない。一方で、コロナ・ショックで貿易量が世界的に落ち込んでおり、いわゆる実需(企業など)の為替取引が減少し、強い方向性が出にくいと考えられる。

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