持ち家がもはや「冗談抜きで困難な夢」になったこれだけの理由“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)

» 2020年08月18日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

日本は実はデフレなどではない

 日本ではデフレ(物価の下落)が続いていると喧伝(けんでん)されており、政府の説明を鵜呑(うの)みにしている人も多いが、アベノミクスが始まって以降、物価が下がったことなどほとんどない。消費者物価指数は一貫して上昇しており、日本はむしろインフレ(物価の上昇)が進んでいるのが実態だ。

 政府がいくらデフレ、デフレと喧伝し、マスメディアが政府の意を受けて、そのまま報道したとしても、日々の買い物などを通じて、地に足のついた生活をしていれば、多くの商品価格が値上がりしていることは生活実感として理解できたはずである。厳しい言い方になるが、デフレと思い込んでいた人は、日々の生活で価格についてあまり関心を寄せていなかったのではないだろうか。

 経済が成長していないのにインフレが進む理由は、海外の経済情勢の影響を受けて輸入品の価格が上がっているからである。確かに日本では経済成長が止まっているが、それは日本だけの話であり、過去20年で諸外国は経済規模を1.5倍から2倍に拡大させており、当然、物価も上昇している。

 つまり日本がいくらゼロ成長でも海外が成長する限り、輸入品の価格は上がる一方なのだ。

マンション価格、コロナ危機でむしろ上昇

 この話はマンション建設にもあてはまる。世界経済が拡大すれば、建設に必要な資材の奪い合いとなるので、資材価格は高騰する。資材価格が上がった分だけ、デベロッパーは販売価格を上げざるを得ないので、日本人の所得が下がっていようがマンションの価格は上がっていく。

photo コロナ禍でむしろマンション価格は上昇傾向に(写真はイメージ。提供:ゲッティイメージズ)

 今年に入ってコロナ危機が深刻化したことで、マンション価格が暴落するという記事をメディアで見かけるようになったが、これも「暴落して欲しい」という願望がベースになっており、事実(ファクト)ではない。外出自粛によって5月のマンション販売は壊滅的な状況だったが、6月に入って販売は急回復。首都圏での販売価格もコロナ前との比較(前年同月比)で7.1%も上昇している。

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