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「いつまでも学生気分でいるな!」と叫ぶ上司こそ、学生時代の価値観を捨て切れていない”幼稚性”から紐解く「日本的マネジメント」の問題点【後編】(2/4 ページ)

» 2020年08月21日 05時00分 公開
[小林義崇ITmedia]
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優秀な人は組織を離れ、時代に合わない管理職は“不要“に

――現役のビジネスパーソンには、どのような変化が起きると予想しますか。

 優秀な人ほど、幼稚なマネジメントを続ける組織から抜けることが容易に想像できます。そして、もっと主体性を発揮できるオープン型の組織に人が集まっていくと思います。

 一方で、組織の力学で権力をふるうことしかできない人は、会社にしがみつくしかありません。過去の成功体験だけを正当化し、それを他人に押し付けようとする。力で従わせようとする。でも結局そうした会社は成長できないので、いずれ「いらない人材」としてリストラされ、転職にも苦労する未来が見えます。

 こうした厳しい現実に、「裏切られた」と思う人もいるかもしれません。というのも、かつては、社員は終身雇用、退職金、年金で生涯の生活を保証されていましたから。上の言うことを聞いていれば出世できたから、理不尽なマネジメントにも耐えられたという側面もあります。でも、もはやそうした時代ではありません。

――今の時代、ビジネスパーソンにはどのような姿勢が求められるのでしょう。

 自身をアップデートし続ける。その一言に尽きるでしょう。日本企業がグローバルで勝てない、生産性が低い、といった問題が言われて久しいですが、これは誰かのせいにして解決する問題ではありません。

 政府が悪い、官公庁が悪い、社長が悪い、中間管理職が悪い、現場の社員が悪い――。そうやって自分以外のせいにしたくなるのが人情ですが、私は全ての立場の人が今の時代に合わせてアップデートしなくてはならないと考えています。誰か、あるいは立場の弱いもののせいにして、「自分は悪くない」「変わる気はない」。それこそ、幼稚でしょう。しかし、残念ながら日本の社会を見ていると、幼稚な経営者やお偉いさんが多い。思いある若手や、外から来た人たちを傷つける。あるいは、物言わぬおとなしい人たちにしてしまう。企業社会にとっての損失ですし、それ以前にとても情けなくなります。

 経営者は、どんなビジョンを持っているのか、どんなビジネスモデルを武器に戦っていくのか――。このことを発信し続ける必要があります。もちろん言いっぱなしではなく、組織体制を変えたり、予算や権限を現場に与えたりすることも大切です。異なる意見や考え方を受け入れる度量も求められます。

 中間管理職は、トップが示すビジョンや方向性をかみ砕きながら、現場の社員の動機づけに取り組む役割があります。さらには自らの事業領域の勝ちパターンを言語化し、組織のルールが現場の動きを邪魔していることに気付いたら、ルールを変えるべく戦うことも求められます。

 一方、現場の社員は、「どういう仕事のやり方が成長につながるのか」「どうやって価値を生んでいけばいいか」ということを常に問い続ける必要があると思います。そして組織のルールに違和感を覚えたら、声に出して社内世論に変えて、組織変革につなげていくのです。

 バックオフィスについては前編記事でも話したように、古いやり方を守るあまり、組織変革の足かせになる可能性が高いセクションです。逆に言えば、既存のルールを整理し、妥協できること、譲れないところを分けてアップデートすれば、事業部門など、社内全体の外部とのコラボレーションを促進し、組織の成長をけん引する可能性も秘めています。

photo 「働き方改革におけるおのおのの役割」(あまねキャリア工房提供)

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