「上司を飛ばして話を進めるな」「会社の休憩時間にモノを食べるな」「上司の決裁を受けるときは、ハンコを傾けて押せ」――。こうした非合理なルールが、いまだ日本企業では常識のようにはびこっている。
300を超える企業、自治体、官公庁などで働き方改革の支援を手掛けてきた沢渡あまね氏は、こうした日本のビジネス慣習を、“幼稚性”の表れとして説明する。インタビューの前編記事【「他と違った行動を認めない」「テレワークで細かく監視したがる」上司が、企業のイノベーションを阻害している】では日本の「これまでのマネジメント」の問題と、「これからのマネジメント」の姿について聞いた。後編では、今後のビジネスパーソンに求められる考え方に迫る。
――前編では、旧来の組織マネジメントを「統制型(ピラミッド型)」、これからの時代のマネジメントを「オープン型」として説明してもらいました。こうしたマネジメントの変化によって、個人の考え方も変化しているのでしょうか。
本格的な変化が起きるのは、まだこれからでしょう。先日、Zoomを使った会議で「役職者を大きく表示できないのか」「上位者より先にログアウトするのは失礼」「在宅でもスーツ・ネクタイを着ろ」といった声が出ている話を耳にしました。これも、いまだに統制型(ピラミッド型)のマインドが染み付いている状況の表れです。
前編記事では、統制型(ピラミッド型)は、“幼稚性”に基づくマネジメントではないかと指摘しましたね(「他と違った行動を認めない」「テレワークで細かく監視したがる」上司が、企業のイノベーションを阻害している)。「偉い人に過剰な忖度をする」発想は、まさに幼稚性に根付いています。これでは、オープンな議論など、到底不可能です。
日本の組織では、こういった不合理なルールが多いと感じますが、考えてみれば中学・高校の部活動に近いものがあります。みんなと同じようにふるまい、長時間の苦労を厭(いと)わない人が評価される世界です。外れる人はのけ者にされるか、いじめられる。
もっともこうしたマインドは、製造業が盛んで、統制型(ピラミッド型)が効果的な時代には意味があったと思います。組織の中で権限を持つ人を明確にして、部下にきちんと従わせることが勝ちパターンになっていたわけですから。実際、体育会系の根性が身についた人が、採用でも重宝されてきましたよね。
――そうした考え方は、今の時代に合わないということでしょうか。
はい。そもそも、幼稚性に基づく統制型(ピラミッド型)のマネジメントを社員に押し付けるのは多様な人材に失礼です。社員の本来的な価値や自律性を奪ってしまっていると思います。
よく、経営者や管理職が「うちの人間は主体性がない」と嘆いていますが、古い価値観やそれに基づくマネジメントが相手の主体性を奪っているのです。主体性を発揮してほしいのなら、統制型(ピラミッド型)一辺倒、製造業モデル一辺倒の考え方を捨て、部分的にでもオープン型を取り入れる必要があると思います。
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