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「いつまでも学生気分でいるな!」と叫ぶ上司こそ、学生時代の価値観を捨て切れていない”幼稚性”から紐解く「日本的マネジメント」の問題点【後編】(3/4 ページ)

» 2020年08月21日 05時00分 公開
[小林義崇ITmedia]
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コミュニケーションのハードルを下げるために

――前編記事で、オープン型の組織になるうえで、雑談も含むカジュアルなコミュニケーションが大切になるとお聞きしました。これは社外とのコラボレーションを生むうえでも必要になるのでしょうか。

 今は1社だけではなく、他社ともつながってビジネスをするのが当たり前になってきています。そのため、ベンチャー企業ではよく勉強会や交流会を開催したり、コミュニティーを作ったりして、コラボレーションの機会を作っていますよね。

 でも、古くからある日本企業の商習慣は、こういった外部との交流を妨げてきました。例えば、形式的に取引先の審査をする、何度も会社に来てもらう、紙の書類を出してもらう、といったプロセスを経てはじめて、取引を前に進めることができる。

 拙著『仕事ごっこ』でも、なかなか仲間を集められない桃太郎の話になぞらえて触れたのですが、大企業とベンチャーが連携するオープンイノベーションがなかなか進まないのも、大企業の古い商習慣が足を引っ張っているからだと思います。

 大企業のなかにはオープンイノベーションを目的化した部署を置いているところもありますが、“大企業さま”という姿勢を崩しません。「大企業の看板を出せば、ベンチャーが協力してくれるかも」といった具合で(それこそ幼稚な発想です)、ひどい場合は飲み会目的でイベントなどに顔を出しているだけという大企業社員もいるくらいです。

 これでは何も生まれるはずがありません。他社とコラボレーションをするのなら、本気度も問われます。ただ上からの指示に従って動いているだけなら、それこそ”仕事ごっこ”になってしまいますから。

――ただ、いきなり違う部署や、他社の社員とコラボレーションをするのはハードルが高いと感じます。

 そうですね。お互いが相手のことを知らない中では、信頼関係をつくるまでに時間がかかるものです。ここで大切になってくるのが、「自ら発信する」という姿勢です。自分が何ができるのか、どんなことをしたいのかを発信すると、同じ価値観をもつ人や企業とつながりやすくなります。つまり、発信することによってコミュニケーションのハードルを下げるのです。

 そうしていったん信頼関係を作れば、あとはオンラインで仕事のコラボレーションをすることは難しくありません。大企業は社外とつながるまでに多大な時間やコストをかけていますが、ITを使って自らをオープンにして、素早く成果を出すことが大切です。これは、大企業にとって何よりのコスト削減になり、オープン型にシフトするうえで大きなポイントになると思います。

――沢渡さん自身が会社員時代に気を付けていたことはありますか?

 私自身、2014年秋にフリーランスになるまでに何度か転職や異動を経験しています。その都度、信頼関係を築くのに苦労したこともあります。転職や異動したばかりのときは“宇宙人状態”ですからね。

 そこで、私は転職・異動先では、積極的にその場の人と会話し、自分のことを発信するようにしてきました。例えば、オフィスで何かディスカッションをしているのを見かけると、「話を聞かせてください」と言って、メンバーに加えてもらう、といった具合に。そこで、自分が手伝えそうなことがあれば手を挙げて、成果を出す。こんなふうに自分をオープンにして発信していると、自然と誰かとコラボレーションできるようになりますよ。

photo 沢渡さん自身、何度か転職や異動を経験し、信頼関係を築くのに苦労したこともあるという

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