三越伊勢丹の「内部留保1500億円」は2年半で消える コロナ禍で“巨額赤字続出”の百貨店業界磯山友幸の「滅びる企業 生き残る企業」(1/3 ページ)

» 2020年08月24日 12時26分 公開
[磯山友幸ITmedia]

 新型コロナウイルスによる経済活動の営業自粛の影響で、百貨店が苦境に立たされている。首都圏などで休業を余儀なくされた4月、5月を含む第1四半期は軒並み巨額の赤字を計上、年間でも赤字決算が避けられない。

 米国では新型コロナの影響で、高級百貨店の「ニーマン・マーカス・グループ」や老舗百貨店の「JCペニー」、米国で最も古い百貨店の「ロード・アンド・テイラー」が次々に経営破綻に追い込まれた。日本でも百貨店はビジネスモデルの終焉(しゅうえん)が叫ばれて久しいが、果たして生き残ることはできるのか。

phot 三越伊勢丹の「内部留保1500億円」は2年半で消える?

大丸松坂屋58.6%減 高島屋48.0%減の連結売上高

 各社の第1四半期は惨憺(さんたん)たるものだ。2月決算会社の高島屋とJ.フロントリテイリング(大丸松坂屋)の第1四半期は3−5月期、3月決算会社の三越伊勢丹ホールディングスとエイチ・ツー・オーリテイリング(阪急阪神)の第1四半期は4−6月期とズレがある。だが共に、緊急事態宣言が出された4、5月が含まれたことから、軒並み赤字決算になった。

 第1四半期の連結売上高は、大丸松坂屋が58.6%減、三越伊勢丹が53.3%減、高島屋が48.0%減、阪急阪神が32.8%減とそろって大幅に減少。連結最終赤字額は三越伊勢丹が305億円、高島屋が205億円、大丸松坂屋203億円、阪神阪急が61億円となった。

 緊急事態宣言が明けた後も、売り上げはなかなか戻っていない。通期の見通しは高島屋と阪急阪神が「未定」としたまま。三越伊勢丹は600億円の赤字、大丸松坂屋は260億円の赤字と、現段階では見込んでいるが、今後の新型コロナの状況がどうなるか、来店客数が戻ってくるのか見通せない段階での数字にすぎない。

phot 第1四半期の連結売上高は、大丸松坂屋が58.6%減、三越伊勢丹が53.3%減、高島屋が48.0%減、阪急阪神が32.8%減と大幅に減少した(筆者作成)

「消えた」客単価7万円のインバウンド消費

 ここへ来て、再び新型コロナ感染者が全国的に増加している。政府は重症者が少ないことなどを理由に再度の緊急事態宣言には後ろ向きだが、高齢者を中心に繁華街への外出を自粛する動きが広がっており、百貨店の売り上げには大打撃の状況が続いている。

 日本百貨店協会が8月21日に発表した7月の全国百貨店売上高は、前年同月比マイナス20.3%だった。4月は72.8%減、5月は65.6%減で、緊急事態宣言が明けた6月は19.1%減にまで持ち直していたが、7月は再び減少率が大きくなった。消費税率が5%から8%になった14年4月の減少率は12.0%、税率が10%になった19年10月の減少率は17.5%だったから、それを上回る激震が続いていることになる。

 さらに、ここ数年、百貨店が「頼みの綱」にしてきたインバウンド消費もほぼ「消えた」。外国人観光客が百貨店で免税手続きをして購入した「免税売上高」は全国の百貨店の合計でピークの19年4月には344億円を記録、20年1月でも316億円に達していたが、それが4月にはわずか5億円に落ち込んだのだ。1月の免税手続きはのべ45万4000人に達したが4月はわずか2400人。6月は戻ったといっても1万2000人にすぎない。

 百貨店の売り上げ全体からみれば、1月でも6.7%にすぎず、大して大きいようには見えない。だが、平均の客単価が7万円に達していたことをみれば分かるように、利益率の高い化粧品や高級ブランド品、貴金属宝飾品などが買われていた。それが激減したことで利益も大きく圧縮される結果になっている。

phot 7月の全国百貨店売上高は、前年同月比マイナス20.3%だった(日本百貨店協会のWebサイトより)
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