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» 2020年08月24日 12時26分 公開

磯山友幸の「滅びる企業 生き残る企業」:三越伊勢丹の「内部留保1500億円」は2年半で消える コロナ禍で“巨額赤字続出”の百貨店業界 (2/3)

[磯山友幸,ITmedia]

最大の赤字を出した三越伊勢丹の財務内容は?

 訪日旅行客の数自体、前年同月比で99.9%のマイナスが続いてきた。国境を超えた移動が難しい状況が続いており、インバウンド消費が百貨店に戻るには相当の時間がかかりそうだ。今年度中に元に戻ることはほぼ絶望的とみていいだろう。仮に国内需要が元に戻ったとしても、百貨店の売り上げ減少はインバウンド消費分の5%以上のマイナスが続くということになる。

 では、こうした状況が続いたとして、百貨店は耐えることができるのだろうか。第1四半期で最大の赤字を出した三越伊勢丹ホールディングスの財務内容をみてみよう。

 当面、赤字が続くとして企業が生き延びるための「頼み」は内部留保(利益剰余金)ということになる。もちろん全てが現預金で蓄えられているわけではないが、すぐに債務超過に転落して経営破綻することはない。三越伊勢丹の2020年6月末現在の利益剰余金は1505億円。3月末には1836億円あったが、赤字決算によって減少が始まっている。

phot 3月末には1836億円あった利益剰余金は1505億円に(単位は100万円、以下、資料は三越伊勢丹ホールディングスのWebサイトより)

 通期では600億円の最終赤字を見込んでいるが、この利益剰余金があれば、乗り切れると考える人が多いだろう。だが、企業経営はそう単純ではない。決算書上、債務超過を免れていても、経営が行き詰まることがあるのだ。

 前述のように利益剰余金は必ずしも現預金の形で蓄えられているわけではない。三越伊勢丹の6月末の「現金及び預金」は345億円。3月末に比べて400億円減っている。もちろん店舗の営業を再開すれば、人件費や水道光熱費などは現金で出ているから、売り上げが元の水準に戻らなければ、資金繰りがつかなくなる。

phot 3月末に比べて400億円減った「現金及び預金」は345億円

 また、百貨店のような小売業の場合、仕入れた商品の「買掛金」なども大きく、その支払いもやってくる。もちろん資金繰りをつなぐために銀行などからの借入金を増やすことも可能だが、収益力が悪化する中で、借入ができるか、また、将来にわたって返済していけるのかという問題が生じる。

 ひとえに今後、どれぐらい売上高が戻るか、ということに尽きるのだが、新型コロナの蔓延(まんえん)が長引いた場合、赤字が続くことになる。3カ月で300億円の赤字が、12カ月で600億円の赤字という会社の予想は、甘いのか適切なのか、現状では何とも言えないが、この規模の赤字が2年半続けば、利益剰余金は底をつくことになるのだ。

 資本金や資本準備金も合わせれば6月末で5000億円あるので、余裕がある、という人もいるかもしれない。しかし、資本は現金で蓄えられているものではない。百貨店の土地建物や設備などに回っており、それを赤字の穴埋めに使おうと思えば、資産売却などをしなければならなくなる。

phot 三越伊勢丹ホールディングスは2021年3月期の連結業績予想として600億円の赤字を見込んでいる

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