『半沢直樹』が人気なのは、「パワハラの被害者が増えているから」は本当かスピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2020年08月25日 09時32分 公開
[窪田順生ITmedia]
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社会が笑えない事態に

 ドラマの半沢直樹は、楽しいエンタメ作品だ。が、一方でエンタメ作品としての高い完成度がゆえに、「こんなもんフィクションだよ」と笑い飛ばすことができない、現実のパワハラもしっかりと描かれてしまっているのだ。

 今回の半沢直樹は、2013年の前作よりも登場人物のアクの強さや、パワハラや嫌がらせがパワーアップしているという指摘がある。実際、先ほども触れたように、半沢直樹の「敵」に対する罵声・怒声も派手になっている。この勢いで次回作がつくられたら、今度は映画「アウトレイジ」のようなノリになっていくだろう。

 では、なぜ半沢直樹の登場人物たちはみんな攻撃的になっているのかというと、やはりそれだけ「被害者」が増えているからではないか。

 13年、都道府県労働局における「いじめ・嫌がらせ」の相談件数も5万件を突破したと大きくニュースになったが、実はそれから右肩上がりに増加中で、18年度には8万件と過去最多。今年はコロナ差別などもあるので、さらにドカンと増えていくはずだ。

 半沢直樹が面白いのは、それだけ我々の社会が笑えない事態になってきていることの裏返しなのかもしれない。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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