日本でも堂々リクルート 中国の“人材狩り”に切り込んだ、豪レポートの中身世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)

» 2020年08月27日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

 いま、米国を中心に、中国に対する締め付けが厳しくなっている。

 日米貿易戦争からハイテク企業締め出し、スパイ行為に絡むテキサス州の中国総領事館の封鎖、中国の一部の大学院生・研究者のビザ停止など、徹底した中国たたきが続けられている。

 そうしたせめぎ合いの中で、ここのところ特に注目されているのは、中国政府による世界の有能人材の取り込みである。例えば、中国政府の「千人計画」という人材確保計画では、科学や先端分野で世界各地の優秀な大学関係者や研究者らに資金を出して味方につけ、そこから技術を中国に引っ張ろうとしている。今、それがスパイ行為にもつながっているとして米当局が摘発や警戒を強めている。総領事館封鎖やビザ停止などはその流れだ。

 さらに先日、オーストラリア発で興味深いレポートが公開され、その内容が情報関係者の間で話題になっている。それによれば、中国政府による優秀人材の取り込みが、米国などに限らず世界中に広がっており、実は中国政府が立ち上げている人材確保戦略の数は、地方の省関連機関も関与して200件以上にもなる。千人計画もその一つで、最もよく知られたプロジェクトなのだという。この活動はかなり大掛かりなものであり、これまであまり詳しく知られていなかった。

世界中で中国政府による優秀人材獲得計画が進んでいる(写真:ロイター)

 また、このレポートで特筆すべきは、日本の状況にも切り込んでいることだ。特に科学やIT、テクノロジー分野をはじめ、関連分野の企業などで働くビジネスパーソンらにも決して無関係な話ではない。そこで、このレポートから中国スパイの新たな側面に迫り、日本がどう対峙すべきか考察したい。

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