この研究報告を行ったのは、政府系のオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)。「Hunting the Phoenix(優秀人材狩り)」と名付けられた60ページほどのこのレポートは、8月20日に公開された。人材確保プログラムを実施している組織などがずらっとリストアップされており、分かっているだけで2008年から16年までで6万人ほどが中国に取り込まれているという。
このレポートからは、実のところ千人計画のような国家的なプログラムは全体の人材確保計画のほんの一部にすぎないことが分かる。全体で200以上あるプログラムの8割は地方政府などが絡んでおり、地方経由での人材確保のほうが圧倒的に多い。つまり、「○○省の関係」という形でリクルートが行われることが多いため、誘われる側も警戒心が薄れるというわけだ。
レポートは中国がそうした活動を行っている世界各地の拠点もそれぞれ明らかにしている。その数は、実に世界で600拠点にもなる。最も多いのは言うまでもなく米国だ。少なくとも全米に146カ所も点在している。
さらに「2008年以降、英国、ドイツ、シンガポール、カナダ、日本、フランス、オーストラリアのそれぞれから1000人を超える人たちがリクルートされている」と、レポートは指摘する。
米国に次いで拠点が多いのはドイツとオーストラリアで、それぞれ57カ所ずつ確認されている。次いで英国の49拠点。その次はカナダで47拠点。日本はその次で6番目に多く、46カ所が確認されている。これはフランスと同じ数になる。
そこで何が行われているのか。これらの拠点では多くの場合、専用の事務所を置いたりスタッフを常駐させたりしていない。つまり中国の関係者らは、拠点から地元の同胞集団やビジネス団体、同窓生の集まりなどに接触して活動する。さらにITや教育関連、大学にいる中国人学生や研究者の集まりなども利用。そこで協力してくれる人には年間2万9000ドル(約300万円)が運営費として支払われ、さらに1人の研究者などをリクルートすれば2万2000ドルをもらえる仕組みになっているという。
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