成功した一発以外は“多産多死” チャイナ・イノベーションのスピード感を支える「野蛮な戦略」とは?プロトタイプシティ 深センと世界的イノベーション (2/5 ページ)

» 2020年08月31日 05時00分 公開
[澤田翔ITmedia]
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短期間に開発と修正を繰り返す「アジャイル」

 もう1つの手法がアジャイルだ。ウォーターフォールの反省を踏まえて作られた手法で、開発対象を短期間で開発できるレベルにまで分割するアプローチである。一週間など短期間での開発、開発機能の評価と今後の計画の練り直し、そしてまた開発というサイクルを繰り返していく。一歩進めた方向が間違えていないかを確認する。そしてまた一歩。この繰り返しで開発を進めていこうというものだ。

 ウォーターフォールと比べると、臨機応変な変更が可能だが、万能ではない。最初から大きな設計図を定めているわけではないので、目標がずれやすい。また短いサイクルで開発方向の修正を繰り返すので、意思決定の共有やコミュニケーションを密に取る必要がある。

 具体的には、会議体の設定、責任者を常に明確にすること、テストの自動化、大型機能開発を分割するモジュール化など、さまざまなルールを駆使することで、アジャイル開発の弱点を補う必要がある。見通せるレベルでこつこつ開発を続けるという、一見理想的にも見えるアジャイルだが、実効性を担保するのはなかなか大変だ。

 この難題をクリアするためには、参加者一人一人に高いスキルが求められる。毎週なんらかの成果を出して積み上げていかなければならない。次回のアップデートは別の人が担当するかもしれないので、プログラミングは正しく構造化しなければならないし、テストも自動化する必要がある。わずかなコミュニケーションでも互いの開発状況を把握し、ミスマッチがないか把握しなければならない。

 ウォーターフォールもアジャイルもそれぞれ長所短所がある。一般に大型プロジェクトにはウォーターフォール、スタートアップなどの小規模案件でアジャイルという切り分けられ方をしている。問題はどちらにしても高い能力が必要という点だ。ウォーターフォールは最初のプランニング・フェーズで、アジャイルは個々の開発者に高い能力が求められる。

開発対象を短期間で開発できるレベルにまで分割するアプローチをアジャイルと呼ぶ

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