「家でペットと過ごす」需要が急拡大 コロナ禍で加速する“品薄”の背景世界を読み解くニュース・サロン(3/3 ページ)

» 2020年09月03日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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需要増の背景に「10万円給付金」

 日本では、そもそも行政や動物愛護団体による活動のおかげで、犬や猫のブリーダーたちもこれまでのように子犬や子猫を量産できなくなってきている。これまでは、ペットショップで売れ残ったり、飼い主が世話ができなくなって捨てたりするなど、行き場を失ったペットが保健所で殺処分されるケースが問題視されてきた。

 そして2020年6月には改正動物愛護法が施行された。殺処分を厳罰化したほか、不適切な飼育を行った場合に行政による指導や立入検査なども行えるようになった。さらに今後は、さらなる規制強化によって、劣悪環境で飼育をする業者を指導しやすくなり、ペットショップや繁殖業者が犬や猫を飼育する際の頭数制限などの規制も行われることになりそうだ。

 最近目立ってきているこうした動物愛護の活動によって、無駄に犬猫が量産されるケースは減ってきた。そんなこともあって、犬猫の値段は19年から上がっていた。そんな中で新型コロナが広がり、需要がさらに急騰しているのが現実だ。

 さらに現在の需要増の背景には、コロナ禍で自宅で過ごす時間が増えたことのほかに、「別の要素もあります」と、別のペットショップ関係者は指摘する。

 「コロナの給付金です。1人につき10万円給付金が手に入ったことで、そのカネをペット購入の足しにしている人が少なくないのです」

 日本はコロナ対策として国民全員に給付金を配ったのだが、それを元手にペットを購入する人たちが増えているらしい。ペット業界では、シニア層は屋内で静かに飼えるメダカなどの淡水魚を購入する人が多いと見られているが、それ以外ではやはり犬猫人気は根強い。

 ただ懸念されるのは、今後このままコロナ禍と経済停滞が続けば、ペットの世話にかかる費用が払えなくなる人たちが続出する可能性があるということだ。先のペットショップ関係者は、「そうなればネットなどで売り出すようなケースも増える可能性がありますね」と懸念する。

 とにかく、日本のコロナ禍におけるペット業界の状況は引き続きウォッチしていきたい。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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