「会社を買う」はありか所有と経営(2/3 ページ)

» 2020年09月05日 07時00分 公開
[猪口真INSIGHT NOW!]
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 通常、売却額は、純資産プラス経常利益数カ月分で計算することが多いという。個人経営の会社が大きな資本金を積むことは考えにくいので、300万以上の売却希望ということは、赤字ではなく、営業利益が出ていることになる。

 マンション投資の場合は、数百万円というわけにはいかないから、1千万円単位の投資になるが、マンションの場合、よほどの悪徳に引っかからない限り、1年で0になることはないし、逆に1年で倍になることもない。

 しかし、会社の場合はありうる。今回のコロナ禍での話は例外中の例外としても、1年単位での倍増や破産は少なくない。

会社の所有と経営

 会社を買うということと、会社を経営するということは、実はまったく異なる。

 会社の所有と経営を分けるというのは、株式会社の考え方で、会社の所有者は、株主といわれ、会社の所有権を表す株式を保有している。出資者と経営者を分離したのは、お金持ちの会社のオーナーが、得意でもない会社の経営をすることなく、お金はなくとも経営能力をもつ本当の経営者に経営してもらい、会社を発展させてほしいからだ。

 資金を持っている人が優れた経営者とはかぎらない。所有者と経営者を分けることができれば、経理のプロに経理業務を頼むように、経営が得意な人に経営を任せて、会社の業績を上げてもらうことを狙うわけだ。

 本来は、会社の保有者が、適切な経営者に経営をしてもらうというのが、もともとのかたちだろうが、会社を買うというのは、優れた経営をしている経営者とその財産を買い、所有者となるものだから、逆の考え方であるともいえる。

 ところが、多くの小規模事業者、あるいはベンチャー企業は、多くの場合、主要株主と経営者は、同じだ。これまでのM&Aのプロが行う分には、ここは百も承知の話なので心配はないだろうが、今回の幅広い事業承継推進の話は、所有と経営の分離という考え方を買う方、売る方が持てるかどうかもひとつのポイントとなりそうだ。

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