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コロナでも出社? 経理の完全リモートワークを阻む壁アフターコロナ 仕事はこう変わる(2/3 ページ)

» 2020年09月07日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

紙だけでない、リモートワークの壁

 経理のリモートワークを阻むのは、経費精算や請求書などの紙だけではない。例えば銀行の振り込みがある。中小企業では、いまでも銀行の窓口に出向いて振り込み用紙に記入して作業を行うところが多い。それはなぜか。

 「個人ではネットバンキングは無料のところが多いが、法人だと利用に手数料がかかるところが多い」(冨氏)ことが、ネックの1つになっている。

 さらにオンラインで処理できない銀行関連の手続きもある。「小切手を使った支払いもまだまだある。意図して小切手を使っているとこもある」と八幡氏。さらに口座振替依頼書も紙が基本だ。一部の銀行ではオンラインに対応してきているが、いまだに紙の用紙に銀行印を押して提出しないといけないところも多い。

 監査対応もある。上場企業では決算書に対して公認会計士が監査を行う。年度決算前は、1カ月間ほど対象企業の会議室に会計士がこもって決算書類のチェックやヒアリングを行う。これも完全にリモート対応は難しく、一部は会社に来て顔を突き合わせて行うという。

 マザーズ上場のラクスでも、5月の決算発表に向けて監査が行われ、当然会社側のカウンターパートの経理担当も出社が必要になった。

出社ゼロで経理業務を実現するためのポイント

 なかなかリモートワークを実現できない経理業務だが、少しでも紙での業務を減らし効率化するための手法はある。その1つは法人向けのクレジットカード、いわゆるコーポレートカードの活用だ。

 ラクスでは2009年にコーポレートカードの配布を開始し、現在は530人いる社員の63%にあたる340人に配布している。会社経費をカードで支払ってもらうことで、小口現金精算をなくしてきた。とはいっても、幹部社員はともかく一般社員にコーポレートカードを渡すのはリスクが高いと考える企業も多い。ラクスはどのように取り組んだのか。

 「最初に導入したときは、カードの引き落し先口座を、管理職だけが会社口座、メンバーは個人口座にした。一般論だが、不正利用されてしまうリスクがあるからだ」(八幡氏)

 しかし、すぐに個人口座からの引き落としは止めて会社口座からの引き落としに統一したという。実際にやってみて、不正利用がなかったということと、タイミングによっては経費精算後の振り込み前に、個人口座から代金が引き落とされてしまう場合が考えられたからだ。

 「不正利用が起きないとは言い切れない。そこで起きたとしても取り返せる金額である30万円を利用枠に設定している。何かあっても給与で全額取り戻せる範囲内でコントロールしている」(八幡氏)

 コーポレートカードを渡してからは、基本的に立て替えの小口精算は禁止した。「コーポレートカードのほうが利用内容も透明化する。また(ラクスの経費精算クラウドサービスである)楽楽精算に利用状況はすべて飛んでくるので、精算処理も行いやすい」(八幡氏)

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