「唐揚げバブル」の行末に不安を感じる、2つの理由スピン経済の歩き方(2/4 ページ)

» 2020年09月29日 09時12分 公開
[窪田順生ITmedia]

「いきなり!ステーキ」の教訓

 その最たるケースが、「いきなり!ステーキ」だ。今でこそピンチだなんだと言われているが、5年ほど前は「立ち食いステーキが大ブーム!」「株価10倍で飛ぶ鳥を落とす勢い」なんてマスコミにチヤホヤされていた。こうなれば当然、「やっぱりステーキ」「カミナリステーキ」など競合店が次々と参入する。それを本家である「いきなり!ステーキ」も受けて立つと言わんばかりに、「年間200店舗の新規出店」を掲げて、全国で急速に店舗網を広げていった。

 その結果が、現在の「いきなり!ステーキ」の苦境である。コロナ禍以前から不採算店が増えて、今年に入ってから100店舗を閉店したことが明らかになっている(6月末時点)。ステーキの満足度、店のサービスなどいろいろな要素が影響しているのだろうが、マスコミにあおられたことで、実像以上に膨れ上がってしまった「ステーキバブル」がはじけてしまったことも無関係ではないのだ。

 もちろん、これとまったく同じことが「唐揚げ専門店」で起きるなどと主張するつもりはない。ニチレイフーズと一般社団法人日本唐揚協会の推計によれば、日本の唐揚げ消費量は年間220億個を超えるという。もはや「国民食」と呼んでも、差し支えない唐揚げとステーキでは、市場の規模や消費者のロイヤルティーがまったく違う。

唐揚げ店も競合がたくさん出てくれば……

 が、一方でそのような国民食市場がゆえ、他の外食ではちょっと考えられないほどの急ピッチで「専門店」が膨れあがっている現実もある。例えば、ワタミが首都圏で展開している「から揚げの天才」は、6月2日時点で7店舗(直営4店舗、FC3店舗)だったが、それからわずか3カ月後の9月11日時点では45店舗と急拡大している。

 なぜこんな急拡大ができるのかというと、「唐揚げ」は他の外食と比べて新規参入のハードルがかなり低いことがある。漬けておくタレの味さえ決めてしまえば、あとは自動フライヤーを使って調理するので特殊な技術はいらない。調理人を雇わなくても、バイトやパートでも十分だ。また、揚げて盛り付けるだけなので、調理場も狭くていい。安価な輸入食材を使えば原価も抑えられる。初期費用がかなり少なくて済むのだ。

 実際、ワタミは「から揚げの天才」のFCとして、初期費用を従来の約半額に抑えて設計した「999万円出店モデル」を開発。2年で投資が回収できるとして幅広くFCオーナーを募集している。

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