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» 2020年10月06日 05時15分 公開

190カ国で3億4000万ダウンロード Tinderが仕掛けるウィズコロナ時代のマッチングビジネス「近づけない、集めない」 時代を生き抜く、企業の知恵(1/5 ページ)

コロナ禍の中でオンラインによるコミュニケーションに商機を見いだているソーシャル系マッチングアプリ 「Tinder」。190カ国、40言語に対応し、世界での総ダウンロード数は3億4000万回にのぼる。コロナ前に比べてTinder内でのメッセージ量は世界中で平均20%増加し、メッセージのやりとりが続く時間も25%延びたという。同社のキーマンに戦略を聞いた。

[武田信晃,ITmedia]

「近づけない、集めない」 時代を生き抜く、企業の知恵:

 「人が集まる」「人に直接会う」ことで稼いできた企業が、新型コロナを契機に自社戦略の見直しを迫られている。どのようにして「脱・3密」や「非接触」を実現し、ビジネスチャンスを生み出そうとしているのか。

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 新型コロナウイルスの影響によって、「3密を避ける」「非接触」が世の中のキーワードとなった。これは「人と人が直接出会う」ことを利用者の目的としたマッチングサービスの産業を根底から揺るがしている。

 各社が経営戦略の見直しを迫られる中、あえてオンラインによるコミュニケーションに商機を見いだし、ビジネスの機会を生み出そうとしているのがソーシャル系マッチングアプリ 「Tinder」だ。Tinderは米Match Groupが運営するブランドの1つで、同社はこれまでも日本でサービスを提供していた。2019年に日本での事業拡大のため、日本法人を設立し、今夏からこの法人配下でTinder Japanの運営を開始している。

phot Tinderのブランドアンバサダーを務める水原希子氏(9月に実施した『SWIPE NIGHT』日本初リリースの記者発表会にて 以下、撮影:山本宏樹)

 Tinderはプラスとゴールドという2種類の有料メンバーシップを提供し、アプリには有料メンバーのみが利用できる機能を搭載することで収益を得ている。その収益の95%が有料会員からの会費で占められ、広告収入は5%未満だという。いわばユーザーに支えられたビジネスモデルだ。メンバーは有料の機能を活用することで人とのつながりの機会を得やすくなるわけだが、これまでその大きな目的はアプリを通して実際に人と出会い、つながることだと想定されてきた。

 だが、コロナ禍でその状況も変わった。「非接触」文化に対応するべく、同社はリアルで人をつなぐことだけにとどまらないアプリの展開を模索している。9月には同アプリ内で、メンバーが自らの選択によって物語を楽しめるドラマ『SWIPE NIGHT 』を3回にわたってリリースした。

phot 『SWIPE NIGHT 』のビジュアルイメージ(リリースより)

 ウィズコロナ時代の訪れを前に、今後のビジネスをどう展開していこうとしているのか。Tinder Japanの永田香澄カントリーマネージャー、Tinder米国本社のジェニー・マケイブCCO(チーフ・コミュニケーション・オフィサー)を直撃した。

 ジェニー・マケイブCCOによれば、コロナ禍の中でもTinder内でのマッチ数や会話数は増え、会話の時間も長くなっているという。2月20日〜3月26日に集計した結果によると、「メッセージ量が世界中で平均20%増加し、メッセージのやりとりが続く時間も25%延びた。メッセージの内容も、ただのあいさつから始めるのではなく、お互いの状況を心配したり、励まし合うメッセージが増えている」(ジェニー・マケイブCCO)という。今後のウィズコロナの戦略に迫る。 

phot Tinderの運営会社の規模(以下、資料はTinder Japan提供)

コロナ禍にもかかわらず増収増益

 Tinderは2012年に米国で誕生した。現在では190カ国、40言語に対応し、世界での総ダウンロード数は3億4000万回、利用者をつなげるマッチ成立件数は430億以上にのぼる。利用者の1週間のデート件数は150万件で、利用者の50%を占めているのがZ世代といわれる18〜25歳だ。

phot 190カ国、40言語に対応し、世界での総ダウンロード数は3億4000万回、利用者をつなげるマッチ成立件数は430億以上にのぼる

 19年のTinder単体での収益は11.5億ドル(約1210億円)で、20年第二四半期の直接収益は前年比15%増、有料会員は620万人まで増えた。また、Tinderを含むMatch Group全体の総売上高は前年同期比12%増の5億5545万ドル(約585億円)、営業利益は同14%増の1億9559万ドル(約206億円)と、コロナ禍にもかかわらず増収増益を達成している。

 さらにジェニー・マケイブCCOは筆者の取材に対し「23年までにアジアでの収益をグループ全体の25%にまで伸ばしていきたい」と戦略を語った。

phot Tinderを含むMatch Group全体の総売上高は前年同期比12%増の5億5545万ドル(約585億円)、営業利益は同14%増の1億9559万ドル(約206億円)と、コロナ禍にもかかわらず増収増益を達成している(Match GroupのIR情報より)

 9月に実施されたSWIPE NIGHTとは、全3話から構成される約8分間のインタラクティブドラマだ。9月12日から3週連続で、毎週土曜日の午前10時から土日限定で配信した。物語が展開する中で、メンバー自身が主人公の行動を選択する場面が表示。7秒以内に二者択一から行動を決める。その選択によって物語が変化し、異なる結末を迎える内容だ。同じ結末を迎えた他のメンバーが優先的にアプリの中で表示される仕組みになっている。

 米ネットフリックスは、SFドラマ「ブラックミラー」の中で、こういったユーザーが行動を選択できるドラマをすでに配信していて、Tinderはその手法をマッチングアプリ流に応用したともいえる。19年に先行配信した米国では、デジタルネイティブであるZ世代を中心に日曜日のマッチ数が26%増加し、メッセージ数も12%増加した。Tinder, Inc.のジェニー・マケイブCCOはSWIPE NIGHTの戦略的な位置付けを語る。

 「当社はZ世代にアピールするものを常に提供したいと考えています。彼らは生まれたときからデジタルの世界で生きてきました。ゲームの『フォートナイト』や『あつまれどうぶつの森』などを通じ、常にオンラインで誰かとつながっていますし、出会っています。刺激的で非日常的なコンテンツを求めているので、SWIPE NIGHTのように自分で結末を選べるコンテンツはZ世代に浸透すると考えたのです」

phot Tinderの米国本社でCCO(チーフ・コミュニケーション・オフィサー)を務めるジェニー・マケイブ氏

 また、前述の「ブラックミラー」なども参考にしたようだ。

 「SWIPE NIGHTのメインアイデアは双方向性で、フォートナイトやネットフリックスからはその部分で影響を受けました。加えて右スワイプ、左スワイプというTinderならではの要素をどう取り入れるかにも腐心しました。スワイプをすることで選択が強いられるわけですが、その選択がメンバーの出会いに影響します。その結果、マッチした相手とは『あの場面ではどっちを選択したのか?』という会話のネタにもなりますしね」

phot Tinder利用者の50%を占めているのがZ世代といわれる18〜25歳だ
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