―― テレワークはさまざまな好影響があった一方、上司と部下とのコミュニケーションが取りにくくなったといった課題も浮き彫りになっています。
白岩 今回の緊急事態宣言後に弊社でアンケートを取ったところ、確かに「コミュニケーションに課題がある」との回答が上司・部下ともにそれなりの割合で出てきました。ならば、オフィスを前提にしない、別のコミュニケーションの形を作っていけばいいのです。回答の中には、「Teams等のツールを使ってよりコミュニケーションを取れるようになった」と答えた上司もいます。例えば、在宅勤務でも朝礼は必ずTeamsで顔を合わせてあいさつし、1日のスケジュールを確認するなどです。そういった効果的な実践例を全社展開するようなことはしました。
ただ、エレベーターや自動販売機でたまたま会って話すような、偶発的なコミュニケーションはやはり生まれなくなります。その機会をどうやって作っていくかは1つの課題ですね。また、われわれは他社の人事部門の方々とも定期的に交流していましたが、今はその機会がなくなっています。人事間の交流や意見交換はすごく重要だと思っているので、オンラインのメリットを生かした他社交流の可能性についても意見交換をし始めているところです。
―― コロナ禍でテレワークを導入した企業は急増しましたが、次はテレワークの定着というハードルもあります。それは技術的な難しさよりも、これまでのやり方を変えていくための合意形成を社内でしていく難しさがあると考えています。テレワーク定着のために、人事部門は社員たちに向けてどのような働きかけをしていくべきでしょうか。
白岩 今回は新型コロナの影響もあり、全員がテレワークを受け入れざるを得ない状況でしたが、働き方の新たな選択肢が増えたと考えれば、社員にとってデメリットはないはずです。ただ、テレワークの制度やルールを理解・浸透をしてもらうための丁寧な説明は大変重要になります。
弊社は7月に新人事制度を発表しましたが、社長が社外に発表した直後、前もって広報が準備していた私のインタビュー記事が社内のイントラネットを開けた瞬間に出てくるようにしました(笑)。社員が否が応でも私の記事を見なければならない状況を作るのも1つの手段です。社員への説明の場は今後もどんどん作っていきますし、労働組合との対話の機会も設けています。労働組合とは「もっといい会社にしたい」という思いは一緒です。ただ、制度に対する一部のギャップはあるため、対話でどう埋めていくのか、そのための時間は非常に重視しています。
―― テレワークの定着によってオフィスに社員が集まる機会がなくなった結果、会社への帰属意識が薄れるといった懸念はありませんか。特に、新卒組はオフィスに行く体験がなければ、“愛社精神”が育ちにくいと思いますが。
白岩 確かに、オフィスで働くよさがあります。8月時点でのテレワーク実施率は7割に及びましたが、われわれは出社組:在宅勤務組の割合は50:50が一番適正だと思っています。テレワークはあくまで手段なので、実施率が高ければいいとは考えていません。
コロナ禍においては、オンラインでも顔を合わせる場を意図的に作っていくことが大切です。今年度は4人の新人が人事本部に配属されましたが、この状況ではなかなか出社できていません。しかし、リアルで一度も会ったことのない先輩たちとランチミーティングをTeamsで実施するなど、オンラインでも顔を合わせる機会を意図的に作っています。もちろん、テレワークが定着するアフターコロナにおいても、リアルで同じ場所に集まるような取り組みはしたいと考えています。
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