「移動」事情激変で大打撃のJR東日本、“生活”を軸にした新たな提案とは?今期は4000億円赤字予想(2/3 ページ)

» 2020年10月28日 17時41分 公開
[加納由希絵ITmedia]

すでに見据えていた「鉄道の移動ニーズ縮小」

 業績の回復に向けて、アフターコロナを見据えた取り組みも進む。新型コロナの影響で特に深夜時間帯の利用者が減少しているとして、21年春に首都圏で終電時刻を繰り上げると発表している。

 終電から初電までの保守作業時間を確保することを念頭に、各方面への終電時刻を現行より30分程度繰り上げて、終着駅の到着時刻を午前1時頃とする。一部線区では初電時刻の繰り下げも行う。具体的には、山手線や東海道線など17線区で終電時刻を繰り上げ、中央線など5線区で初電時刻を繰り下げる。

 電車を走らせる時間の変更は、現在とその先の鉄道需要に合わせた施策だといえるが、新たな需要を予測し、それに対応する施策も打ち出している。

 その動きは、コロナ禍以前からあった。18年7月に発表したグループの経営ビジョン「変革2027」では、「2020年以降、人口減少のほか、働き方の変化やネット社会の進展、自動運転技術の実用化等により、鉄道による移動ニーズが縮小し、固定費割合が大きい鉄道事業においては、急激に利益が圧迫されるリスクが高い」と、すでに環境変化を予想している。感染症の拡大によって社会変化のスピードが早まっただけともいえる。

鉄道による移動ニーズ縮小を見据えていた(出典:JR東日本グループ経営ビジョン「変革2027」)

 20年9月に公表した事業方針でも、将来を見据えた取り組みのレベルとスピードを上げて「変革2027」を実現することを掲げている。みんなが一斉に通勤電車に乗って会社に行く前提は消え、個人の生活を中心とした分散型の社会を構築する中で、新たな需要を生み出していく必要がある。

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