“トリキの錬金術”や“無限くら寿司”で課題噴出 Go To Eatが飲食店事業者を救わない、これだけの理由ここがヘンだよ「Go To Eat」(1/4 ページ)

» 2020年11月04日 14時02分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

 新型コロナウイルスの影響に対する飲食店への支援策として、「感染予防対策に取り組みながら頑張っている飲食店を応援し、食材を供給する農林漁業者を応援する」目的の「Go To Eatキャンペーン」が、10月1日に始まった。

phot 「感染予防対策に取り組みながら頑張っている飲食店を応援し、食材を供給する農林漁業者を応援する」目的の「Go To Eatキャンペーン」(農林水産省のWebサイトより)

 キャンペーンには、オンライン予約サイトを利用することでポイントが付与されるオンライン飲食予約事業と、プレミアムが付いた食事券を都道府県ごとに販売する食事券事業がある。しかし、自分の地域でいつから、どの店で使えるのかを把握している消費者は決して多くはないのが実態だ。

 店によって使える予約サイトが違うなど仕組みも複雑で、食事券に関しては発売されるとすぐに売り切れる地域もある。誰でも気軽に利用できる仕組みになっていないため、消費者にとって不公平な状況が生まれていると言わざるを得ない。

 不公平なのは、事業者にとっても同じだ。オンライン予約サイトについてはもともと利用していない飲食店も多い。予約サイト事業者の大半は送客手数料を取るため、躊躇(ちゅうちょ)する店も少なくないだろう。オンライン予約が一般的ではない地方の飲食店にとっては、あまり恩恵もないといえる。

 しかも、オンライン飲食予約事業をめぐっては、問題も起きている。焼き鳥チェーンの「鳥貴族」では、ディナーの時間帯に1000円分のポイントが付く仕組みを利用して、327円の一品だけ頼んで差額を得る利用者が現れ、「鳥貴族」ではサイト経由の予約をコース限定に変更した。

 また回転寿司チェーンでは「くら寿司」が、得たポイントで予約して食事をすると、さらにポイントがつくことから、“無限くら寿司”と話題になった。「かっぱ寿司」も同じ仕組みを導入するなど、ポイント利用をめぐる攻防は過熱しつつある。

 しかし、これで飲食業界全体の支援につながると言えるのだろうか。実は、飲食業界は「Go To Eat」キャンペーンに対して、計画段階から反対を表明し、事業者や生産者への救済を訴えてきた。キャンペーンが始まって見えてきた問題点をお伝えする。まず初めに、「Go To Eat」キャンペーンが飲食店のためになっているのか、疑問点を提示したい。

phot オンライン飲食予約事業の概要(農林水産省のWebサイトより)
phot 食事券事業の概要(農林水産省のWebサイトより)

消費者にも事業者にも不公平

 「全国の飲食店のうち、特に居酒屋などアルコールを出す業態は、緊急事態宣言の解除後も売上の回復が鈍く苦しんでいます。本当に困っている事業者を救済するためには、Go To Eatでポイントや食事券をばらまくのではなくて、経営危機に直面している事業者を救うべきではないでしょうか」

 こう話すのは、日本フードサービス協会の石井滋常務。協会は正会員と賛助会員をあわせて全国で800社以上、8万5000店以上が加盟する、外食産業では国内最大規模の組織だ。「Go To Eatキャンペーン」には、オンライン飲食予約事業とプレミアム付き食事券事業という2つの異なる参加方法がある。しかし、いずれも全ての飲食店が公平に恩恵を受けられるものにはなっていない、と石井常務は指摘する。

 オンライン飲食予約事業は、予約サイトを利用して来店した消費者にランチタイムなら500円分のポイント、ディナータイムなら1000円分のポイントが付与される。飲食店が参加するには、オンライン予約サイトに登録する必要がある。多くの予約サイト事業者には送客手数料を支払わなければならない。

 食事券事業は、都道府県ごとに開始時期が異なる。東京都は11月20日から販売が開始されるなど、11月に入ってから始まった地域も多い。飲食店側が食事券事業に参加するためには各都道府県の事務局に予め登録しなければならないが、「感染対策が不十分」との理由で登録を拒否されることもあるという。

phot 日本フードサービス協会のWebサイト
phot 「くら寿司」のWebサイト上に示されている家族3人で予約して「Go To Eat」キャンペーンを利用したケース(「くら寿司」のWebサイトより)
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