在宅勤務なら大丈夫でしょ! 「100万人の引きこもり」を活用できるのかスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2020年11月17日 09時38分 公開
[窪田順生ITmedia]

普通の人と変わらない生活を送る

 が、残念ながらこのシナリオが実現する可能性は低い。石井氏や共同生活を送っている方たちはこの地域でピタッとフィットしたが、みんながそこでハッピーに定住できるわけではない。

 実際、都会で暮らしている人の中に、「田舎暮らし」に憧れて農村や過疎地などに移住するケースが増えているが、そこでみんながみんなそこでハッピーに定住できるわけではない。人間関係のトラブルや、寂しさ、生活の不便さ、そして体力の衰えなどを理由に都会へと戻っていく人たちが必ず出てくる。縁もゆかりもない過疎地で「定住」するのは、たやすくできてしまう人もいるが、ハードルが高い人も世の中にはかなり存在しているのだ。

 特に田舎で暮らした方はご存じだろうが、田舎というのは都会よりも遥かに人間関係が濃密だ。人の庭先でもズカズカと入ってくるし、共同体の中での話はあっという間に広まるので、都会で暮らすよりも遥かに人間関係に注意を払わなくてはいけないのだ。

 というと、「いや、それはあくまで普通の人の話でしょ? 引きこもりは1人で家に引きこもっているんだからそもそも人間関係ないでしょ」と感じる人も多いかもしれないが、実はそのような誤った認識こそが、筆者が「引きこもり100万人を過疎地へ」というアイデアが難しいと考える最大の理由である。

 先ほどの内田氏の言葉にあったが、多くの人は、引きこもりは家でじっとしている人だと考えている。だから、引きこもるのならどこだっていいでしょ、ということで「じゃあ過疎地に行ったら?」という話になっているワケだが、これは事実ではない。

 実は「引きこもり」と呼ばれる人の多くは、世の中の大多数の人と同じく普通に出歩いている。実態としては、「出歩いたり引きこもったり」と呼んだほうが正確なのだ。

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