「引きこもり」と呼ばれる人たちの社会参加を促すのなら、まずは世界的に見ても異常なほど多様性がかけた教育から変えて、世の中を少しずつ変えていくしかないのである。
「引きこもり100万人を過疎地へ」という考え方にもやや当てはまるが、急速な人口減少で尻に火がついている日本の労働市場では、人が足りなくなったところに、別のところから誰かをもって来てとにかく頭数を合わせよう、というような「帳尻合わせ」の考え方が目立つようになってきた。
「これまでのような無茶な長時間労働ができなくなってきたから、結婚して子育てしている女性にも会社に残って働いてもらえばいいか」
「低賃金で辛い労働が若者に敬遠されて人手不足になっているので、日本で働きたがっているベトナムや中国の労働者に働かせりゃいいだろ」
「新卒の若者が減ってきたし、すぐに辞めちゃうから、定年を延長して、これまで管理職でふんぞり返っていたシニアも一兵卒に戻って足腰立たなくなるまで働いてもらうか」
こんな感じで減ったぶんの補充に頭がいっぱいだ。しかし、ひとつ見落としているのが、彼らはみな「労働力」ではなく、「人間」だということだ。
人間なので待遇に不満があれば、モチベーションは落ちる。そこまでいろいろなものを犠牲にしてまで働いて、その見返りがなければ投げ出してしまう。それが人間だ。外国人の技能実習生が「こんな低賃金で働けるか」と続々と職場から逃げ出しているのが、その証左である。
本当に人材を活用したいのなら、その人たちが何に悩み、何が足かせになって活躍できていないのかを考えるべきだ。つまり、「心」を理解しなくてはいけないのである。
これまで人口が右肩あがりで増えていた日本は、とにかく「頭数」をそろえることが最優先で、「人権」は後回しにされてきた。しかし、人口減少に転じてた今、「頭数」をそろえる考えをあらためない限り、一億総ブラック社会へまっしぐらだ。
急激に人口減少していくこれからの日本の政府や企業のリーダーたちに最も求められるのは、人材の「心」を理解する感性なのではないのか。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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