以前、女性の自殺問題に長年取り組んでいる大学院の先輩が、「いったいいつになったら、日本は女性の自立を認めるんでしょうか。これだけ女性が働くのが当たり前になり、共働きが当たり前になっているのに、いまだに女性の労働力は、補助的な労働力と位置付けられている。結局は、根強い“奥さん幻想”が、低賃金の非正規の仕事を女性に押し付けているんです」と、嘆いていました。
いわく、「家族が、追い詰めることだってある」と。「子供のことを考えれば女性はどんな状況でも耐えられる」とか、「SOSに家族が早く気付くことが大切」といった家族幻想が、女性を追い詰める場合が少なくないというのです。
もちろん男性でも家事や育児をする人は増えました。介護をする男性も増え続けているのも事実です。しかし、コロナ禍で死を選択せざるを得ない女性が急増している背景には、一言ではくくることのできない複雑な状況があり、「シングルマザー問題」にすり替えてしまうのは危険です。
「ひとり親世帯への支援の推進」を求める声が政治家さんたちから上がっていますが、シングルマザーの貧困問題に加え、非正規雇用の低賃金と不安定さ問題、さらに、女性は男性より賃金が低いという、「非正規の低賃金」と「女性の低賃金」の2つの問題に向き合わないことには、悲しい選択を余儀なくされる女性を救うことはできないのです。
以前、こちらのコラム(ボーナスは“特権”か 「低賃金で何が悪い?」正当化され続ける非正規格差 )で、女性の賃金が低いまま正当化されている歴史的背景を書きましたが、女性の自殺者が急増している事実を鑑みれば、いかに女性の低賃金問題が深刻かが分かるはずです。
コロナ禍で注目されたエッセンシャルワーカーの多くは女性ですし、失業者7万人の大半も非正規で占められています。
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