ミシュランの星を獲得したタイの「屋台めし」 70代女性シェフが究極の「顧客体験」を提供できている理由食の流行をたどる(3/5 ページ)

» 2020年12月09日 05時00分 公開
[有木 真理ITmedia]

たった1つの店が街を変える可能性

 私がジェイ・ファイを訪れたのは19年6月。日本のとある有名店のオーナーシェフとフリーランスのソムリエさんと3人でのグルメ旅だった。もともとは別の有名レストランに行くのが目的だった。

 旅行中に何を食べるか? 作戦会議中にオーナーシェフが「どうしても行きたいローカル店がある」と提案した。シェフによると、ローカル食堂としては考えられない超人気店のため、予約は2カ月先まで基本的には埋まっている。しかし、当日並んで入店することは可能だという。

お店の外には行列と腕を振るうジェイファイの姿を一目見ようと見学客が

 早速お店に向かうことに。近隣には朝食が食べられる屋台や観光客は決して足を踏み入れないであろう雑貨屋がある。そんな街の一角にジェイ・ファイはあった。

 同店は午後3時にオープンし、翌朝に閉店していたはずだ。私たちは、午前10時にお店に行き、予約管理シートに名前を書いた。われわれは11番目のようだった。

 小さいお店なので、厨房は外にある。店の外には、「正確な待ち時間はお約束できません」との張り紙があった。

料理を待つお客

 オープンまでは時間的に余裕があるので、一時その場を離れた。午前11時過ぎに様子が気になり、お店に戻ると予約の紙には40人分ほどの名前が記載されていた。

 オープンまでの間、周辺をリサーチして気付いたことがある。近隣には観光地はある。しかし、ジェイ・ファイだけが目当てという人がとても多いのだ。お店には行列ができるのだが、待っている間に時間をつぶすためのおしゃれなカフェが賑わっていたりする。比較的新しいホステルもいくつか存在し、欧米人らしき人達であふれていた。たった1つの小さなローカル店が街を変える可能性があると感じた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.