サービスとしてソフトウェア機能を提供する、いわゆる「SaaS」ビジネスが国内でも花盛りだ。東証マザーズの時価総額をみると、上位10社のうち6社がSaaS関連企業となっており、評価の高さが分かる(ビジネスパーソンのためのSaaS KPI入門 参照)。
一方で、既存の財務諸表の見方からすると、SaaS企業の評価は厳しいものとなることがまだ多い。赤字先行型で、なかなか利益が出にくいモデルだからだ。そうなる構造的な理由はどこにあるのか。
ERPのフロント機能をクラウドで提供する、国内SaaS企業のさきがけの1社でもあるチームスピリットの荻島浩司社長に、SaaSビジネスの捉え方を聞いた。
SaaSビジネスの特徴は「高く仕入れて、安く売れ」(荻島氏)にあるという。これはSaaSビジネスが、初期に大きな投資を行ってサービスを開発し、それを安価に多くのユーザーに提供するからだ。
「自社専用に開発するなら仮に数億円がかかるとしても、なかなかそれ以上は出せない。一方でSaaSのシステムは数十億の費用がかかっているものを、数百円で提供できるようになる」(荻島氏)
当然初期投資額は大きくなる。一方で、売り上げは毎月少しずつしか増えていかない。いったん顧客を獲得できれば、解約がない限り継続して売り上げが発生するが、売り上げの拡大ペースは新規顧客の獲得ペースに応じるからだ。
多くのSaaSでは月単位の売り上げ計上を基本としているため、新規顧客獲得にともない、毎月の売り上げは階段状に増加していくことになる。荻島氏は、「本当に、初期の回収は厳しい。同じ営業活動をしても、1年めは半分しか売り上げにならない。2年めは四角になっていく」と、SaaSの売り上げの現れ方を解説する。
このことが、SaaSビジネスのほとんどが赤字先行となる理由だ。売上高自体は積み上がっていく構造になるため、解約を差し引いてもユーザーが増えている限り、長期的には売り上げは増加していく。一方で、初期投資額は大きく、機能強化のための開発コストと、新規顧客の獲得コストが先行していく形だ。
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