ナイキ、DHCも標的に! 「不買運動」はホントのところ、どれほど効果があるのかスピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2020年12月22日 09時10分 公開
[窪田順生ITmedia]

大坂なおみさんを叩いて、UFOを食べる

 イデオロギーに対してはこれでもかというくらいに徹底的に叩き、勢いあまって個人への誹謗中傷も辞さない一方で、その憎悪が必ずしも企業の製品やサービスとはリンクしないのだ。

 このような傾向は、実は企業危機管理の実務の世界では以前からささやかれていた。ネットでは大炎上し、アマゾンレビューも誹謗中傷で大荒れ、お客様センターにはヤクザ顔負けのクレームの嵐というような状態でも、実は売上的にはそこまで深刻な打撃がない、ということがちょくちょくある。10年以上前から報道対策アドバイザーとして、不買運動の標的となる企業にアドバイスをしてきた立場から言わせていただくと、むしろそのようなパターンのほうが多い印象なのだ。

 もちろん、街中でデモや抗議活動をされて、ネットでは悪口だらけだと、レピテーションや企業イメージはボロボロだし最悪、株価にも影響が出ることもある。しかし「不買」などを叫んでいる人は社会の中でほんのひと握りであって、大多数の顧客はそのようなイデオロギー的な話に影響されずに製品の購入や、サービスの利用をしてくれるのだ。

 そして、おそらくこのような傾向は若い人になればなるほど高いのではないかと思っている。お隣の韓国のいわゆる「日本製品不買」がそうだからだ。

 2019年7月頃から、日本の輸出厳格化措置に反発した韓国では、「#BOYCOTTJAPAN 」「#NOJAPAN 」というハッシュタグで、ユニクロ、自動車、さらには日本のアニメや漫画などの不買運動がSNSを中心に盛り上がった。しかし、それが年末ごろになると徐々にトーンダウンした。

 ビジネスインサイダージャパンの『日本製品不買を「こっそりやめる」韓国の若者たち。SNSには投稿しない複雑な対日感情』(2019年12月25日)という記事によれば、韓国の若者の中にも、このような反日思想と自分のライフスタイルをごちゃ混ぜにすることを「バカらしい」と考えて、これまで通り日本の製品を買い、好きな日本のアニメを見ているという。

 幼い頃から「反日教育」を受けている韓国の若者でさえこうなのだから、日本の若者などもっと「不買運動」に対してドライなのではないだろうか。

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