このランキングで特に興味深いのは、世界トップ3の経済大国である米国、中国、そして日本がイノベーションという意味ではトップに全く届かないことである。経済大国が必ずしもイノベーションが進んだ国というわけではない。ちなみに米国は辛うじてトップ10に入っているが、中国は15位になっている。
日本の経済団体のリーダーたちが「イノベーション」を連発する理由も、世界的な水準では評価されていないことが背景にあるのかもしれない。
さらに世界経済フォーラムでは20年9月にも、別のイノベーションに関する世界ランキングを掲載している。このランキングは世界知的所有権機関(WIPO)による「世界イノベーションランキング」である。
このランキングは世界131の国と地域の経済を分析したもの。イノベーションによるインプットとアウトプットの2つのカテゴリー(合わせて80ほどの指標)をまとめて、各国の経済を比較している。
インプットは次の5つで評価される。制度・環境、人的資源・研究、インフラ、市場の高度化、ビジネスの高度化である。アウトプットでは、知識やテクノロジーの創造、そして創出(実際の商品やサービスなどのアウトプット)である。
これらを分析することで、世界のどの国でイノベーションが進んでいるのかが分かる。ランキングを見ると、1位スイス、2位スウェーデン、3位米国、4位英国、5位オランダ、6位デンマーク、7位フィンランド、8位シンガポール、9位ドイツ、10位韓国。
また日本が出てこないので、さらに見ていくと、11位香港、12位フランス、13位イスラエル、14位中国、15位アイルランド、そして16位にやっと日本が登場する。しかも、18年には13位、19年には15位だったことから、最近は毎年順位を落としていることが分かる。
アジアだけを見ても、シンガポール、韓国、香港、中国に次いで日本は5番目ということになる。技術大国といわれてきた日本も、インベーションは他と比べて生み出せておらず、イノベーションを創出する環境も整っていないということだ。
冒頭のように、名だたる経済団体のリーダーたちや首相までが、イノベーションについてしつこく言及しているが、これらのランキングを見ると、すぐにはイノベーションで世界をリードするような状況ではないというのが現実だろう。
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