北海道大樹町で観測ロケットと超小型衛星打ち上げロケットを独自開発しているインターステラテクノロジズ(以下、IST)は、「ホリエモンのロケット採用」と名付けた新たな採用戦略をスタートさせた。
ISTでは選考のエントリーを始めた2020年10月、 ISTのファウンダーの堀江氏と稲川貴大社長による会社紹介セミナーをオンラインで開催。このセミナーの模様を、前編記事ホリエモンが「次の基幹産業は宇宙ビジネスだ」と断言する理由に続いてお伝えする。
ISTが今後事業を拡大していくためには、人材を呼び込むことも大きな課題だ。33歳の稲川社長は、東京工業大学大学院から大手カメラメーカーへの就職が決まっていたが、ISTとの出会いによってロケット開発に携わりたいと強く思い、入社当日にカメラメーカーを退社して宇宙ビジネスに飛び込んだ異色の経歴の持ち主でもある。
後編ではISTの今後の計画と、採用戦略について明らかにする。司会はIST広報の中神美佳氏。
中神: オンラインでセミナーをご覧になっている方から「ISTで活躍するには、どんな分野の勉強をすれば良いのか、どんなスキルを求めているのか教えてほしい」という質問がきています。
稲川: 機械系であれば、基本的には、大学の工学系で「4力」といわれる分野ですね。熱力学、機械力学、材料力学、流体力学。あとは構造力学や制御工学のような一般的に学ぶ内容を習熟していれば、実務はすぐにできると思います。
知識面だけではなく手が動くことも大事で、知識を得た上で実際にものにしていく力があるといいですよね。大学の研究室や自分のプロジェクトなどで、小さいものでいいので何かものづくりを経験しておくと、ロケットでもすぐ活躍できます。
当社に就職してくれた人は、やはり学生の時にものをつくっていた人が多いですね。学生の時に小さなロケットを手掛けた人もいます。
中神: 手が動く人と表現していますが、具体的にはどういう人が入社すると面白いなと思っていますか。
稲川: 新しいことに取り組んでいるので、アイデアを出せる人です。当社には新しい考えを取り入れる文化があります。新しいものに飛びついて提案できる人がいいですね。
中神: 技術面での質問もきています。ISTのロケットには、なぜ固体燃料ではなく液体燃料を選択したのでしょうか。
堀江: これには明確な理由があります。固体燃料での打ち上げは用途が限られるんですね。有人宇宙ロケットは打ち上げられないですし、大型化するのは技術上難しく、コストも高くなりがちです。それと火薬を使いますので、火薬メーカーさんから購入することが、価格競争力を失わせてしまう要因になります。稲川さん、補足ありますか。
稲川: ISTでは液体燃料の中でも、炭化水素系の燃料を使用しています。観測ロケットの「MOMO」はエタノール、超小型衛星打ち上げロケットの「ZERO」はメタンです。当社のこの立ち位置は大事なポイントです。
ロケットの液体燃料の種類は、おおまかに言って水素系、炭化水素系、ハイパーゴリックの3つに分けることができます。ハイパーゴリックは軍事用の技術として使われていて安全性の観点からも日本で使うのは難しい。日本は水素の技術は極めていますが、世界の主流は炭化水素系になっています。
炭化水素系の燃料は、日本ではJAXAや大手メーカーで実験は行われているものの、実際に打ち上げを行って実用化したのは「MOMO」を宇宙空間に飛ばした当社だけです。炭化水素系燃料のロケット技術で国内をリードしているのはISTだということは、知っていただきたいですね。
中神: この点はもっと伝えていかないといけないですね。「MOMO」と「ZERO」の先に見据えていることや、さらなる宇宙事業の可能性についての質問もあります。
堀江: 「ZERO」を打ち上げれば、その先に地球観測衛星のコンステレーションなど人工衛星の事業も自社でできるようになると思います。ロケットを大型化することで、有人宇宙飛行も実現したいですし、太陽系の外に探索機を打ち上げてみたい。宇宙は無限に広いので、やるべきことは山積みになっている感じです。
稲川: まだまだ知られていないと思いますが、会社名のインターステラテクノロジズは、太陽系を飛び出て、恒星間(Interstellar)空間に行こうという意味で付けています。高い視座というか、遠い先を見て事業を進めているところです。
もちろん、太陽系を飛び出すにはまだまだ技術面で足りていません。観測ロケット「MOMO」で言えば、定常的に打ち上げられるように品質や信頼性を上げていくことと、安いロケットを数多くつくることを実現する必要があります。具体的な課題は見えていますので、一つひとつ解決していきたいです。
宇宙開発は国家が進めてきた時代から、ここ10年くらいで民間のビジネス領域になってきました。この流れは今後も拡大して、宇宙が経済活動でまわっていく時代がくるでしょう。このトレンドにしっかりキャッチアップしていきたいですね。
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