北海道大樹町で観測ロケットと超小型衛星打ち上げロケットを独自開発しているインターステラテクノロジズ(以下、IST)は、ロケットの開発と製造のスピードを加速させるため、「ホリエモンのロケット採用」と名付けた新たな採用戦略をとり始めた。
「ホリエモンのロケット採用」は、ロケットに関する知識や経験は問わず、ものづくりに対する情熱やこれまでの経験、スキルなどを重視して採用するもの。同社ファウンダーの堀江貴文氏が最終面接をする。
選考のエントリーを始めた2020年10月、ISTは会社紹介セミナーをオンラインで開催。堀江貴文氏とISTの稲川貴大社長が、「なぜ、僕らは宇宙を本気で目指すのか」というテーマで宇宙産業の未来を語った。このセミナーの様子を2回にわたってお伝えする。
前編では、堀江氏と稲川氏が、宇宙ビジネスが自動車産業などに代わって日本の基幹産業になる可能性を語った。司会はIST広報の中神美佳氏。
中神: まずは堀江さんと稲川さんが、宇宙ビジネスに注目している理由から話していただきたいと思います。
堀江: 宇宙ビジネスに注目する観点で考えているわけではありません。誰でもどんなものでも宇宙に打ち上げて輸送できるような時代を作り、宇宙の輸送業を確立させるミッションを掲げていて、結果としてビジネス化しなければいけないと思っているだけです。
そのためには国家主導の宇宙開発では難しいと考えています。その理由は2つあります。1つは国家予算に左右されると、サステナブル(持続可能)ではなくなる点です。かつては米国と旧ソ連、現在のロシアが宇宙産業をリードしましたが、米国はアポロ計画とスペースシャトルの計画が終了し、旧ソ連は国家自体が消えました。科学技術に理解のある人たちだけでなく、国民にも税金を投入することを納得させる必要があります。国民の心がうつろいやすいことを考えても、サステナブルとは言い難いのです。
国家主導では難しいもう1つの理由は、コスト面です。宇宙に行くコストは有人宇宙船がソユーズしかなかった時代は、宇宙飛行士1人あたり90億円といわれていました。それが民間企業であるスペースXが開発したクルードラゴンでは、おそらく数十億円レベルで下がっています。既存の技術を応用してロケットを作ることで、コストが安くなっている。宇宙開発は民間が推進する時代になっています。
稲川: 国家による宇宙開発が成功ばかりしているわけではないことは、あまり知られていないですよね。いまだに国家がやるべきだと感じている人も多いと思います。スペースシャトル以降のNASA(アメリカ航空宇宙局)の宇宙プログラムも、時の政権によって計画をガラガラポンでやり直すなど、かなりグダグダになってしまいました。
だからこそ、宇宙開発は民間でやるべきだということが世界的なトレンドになっています。注目されているのは、PayPalやテスラを設立したイーロン・マスクのスペースXや、アマゾンを創設したジェフ・ベソスのブルーオリジンです。米国では他にも人工衛星の会社も盛り上がっていて、NASAや国の予算が民間に流れて、産業の規模も大きくなっています。
日本も米国を参考にして、これから国が宇宙産業をサポートする風向きになってくると思います。ただ、サポートを受けて生きるようではダメなので、ビジネスとして事業を回すことで健全な宇宙開発を進めたい。そう考えて、私たちはコストを重視したロケット開発をしています。
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