「ふざけんなよと」怒り爆発 大手外食が“露骨に冷遇”されるワケスピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2021年01月19日 10時20分 公開
[窪田順生ITmedia]

ロビイングをする必要性

 さて、ここまで聞けば、筆者が何を言わんとしているか分かっていただけただろうか。

 中小企業、個人経営の小規模事業者などの「支援」を求める業界団体は、以前から安倍政権を力強くバックアップしてきた。自民党本体への政治献金はもちろん、全国の商工会を通じて、寄付や選挙協力をやってきた。そのような地道なロビイングが、政府を動かして、小規模企業振興基本法など各種の優遇策につながっている。

 一方、外食大手というと、外形的には、そこまでロビイングに本気で取り組んできたようには見えない。日本フードチェーン協会の新年会や懇親会に、安倍首相や与党の重鎮がやってきてあいさつをしたなんて話も聞いたことがない。

 なぜこうなってしまうのかというと、外食産業が「規制業界」ではないからだ。飲食店を開いたり経営したりするのに、そこまで国による厳しい規制はない。中小や個人事業主の優遇は、日本商工会議所や各地の商工会が訴えてくれている。つまり、外食には業界が一丸となって規制と戦うとか、優遇を求めてロビイングをする必要性がそれほどないのだ。

 つまり、今回のコロナ経済対策で、中小企業や個人事業主ばかりが優遇されているのは、優遇されるだけの「根回し」をしっかりやってきたからなのだ。

優遇される背景に「根回し」があった!?

 なんてことを聞いても、「菅さんはそんな金や選挙のために偏った政策をするような人じゃない」という反論もあるだろう。お気持ちはよく分かる。が、菅政権の政策が実は政治献金や選挙協力という「政治的力学」によって、かなり偏りがあることは、残念ながらこの数カ月を見れば明らかだ。

 例えば分かりやすいのが、「携帯電話の引き下げ」だ。政権発足時に支持率アップにも貢献し、「既得権益に切り込む庶民派首相」というブランディングにも役立ったこの政策だが、冷静に考えれば「政治による民間企業への圧力」以外の何者でもない。では、なぜ携帯業界にはこんな露骨な冷遇ができたのか。もちろん、さまざまな理由があるが、この業界が外食同様、ロビイングにそこまで本気で取り組んでこなかったことも無関係ではない。

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