それではSaaS企業の時価総額はなぜこれほど高く評価がなされるのでしょうか。
ここでは、「予見性」「成長性」「海外投資家」の3つのポイントで整理したいと思います。
SaaSビジネスの粗利率は一般的には70%程度となることが多く、広告や人件費への投資を一定規模に抑えれば、安定したストック収益を享受し、高い利益水準が継続して続くことが見込まれます。
現在、国内SaaS企業でそのようなフェーズにある企業としてラクスが挙げられます。
同社の21年3月期の会社予想では、売上高151億円に対し当期純利益が27.2億円となっており、当期純利益率18%と高い利益率で着地する見込みです。安定的な成長率への評価も相まって、3000億円を超える時価総額となっています。
freeeやマネーフォワード(SaaS事業)、プレイドなどの大型のSaaS企業は、現時点においては赤字であるものの、将来的に投資を抑制することによって、同様に高い利益率を達成できるものと考えられています。
これらの企業はIR資料において「G&A」「S&M」「R&D」や広告宣伝費といったコスト開示を行っていますが、ビジネスの透明性を高めるとともに、費用を適切にコントロールすることで「将来的には高い利益を継続的に出せる企業」ということを伝える狙いがあります。
ヤプリのコスト開示(同社成長可能性に関する説明資料)
S&M: Sales & Marketing
販売促進にかかわる広告宣伝費やセールス人員などの人件費に関連する経費
R&D:Research & Development
研究開発にかかわるエンジニア人件費などに関連する経費
G&A: General & Administration
コーポレート部門の人件費やその他一般管理費などに関連する経費
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