世界初! エネルギーを生み出す北極圏のホテル デンマークの建築家が抜擢された理由独自の武器(4/5 ページ)

» 2021年02月02日 07時00分 公開
[小林香織ITmedia]

世界で注目される「Svart」の内装に抜てきされた理由

オープン前から話題の北極圏のホテル「Svart」(写真提供:MIRIS Group)

 スペースコペンハーゲンは、自身のアプローチを「詩的モダニズム」と名付けている。

 「現代的なアイデアへの好奇心は持ちながらも、流行に左右されない詩のような、時代を超越した空間を私たちは好みます。それは素材との関わり方にも現れており、膨大な種類がある新素材を使用する代わりに、素材へのアプローチは古風であることが多いですね」(Rützou氏)

 現代の革新的な素材やグローバルな視点を生かしつつ、普遍的な美しさを追求する。そんなアプローチを武器に多方面で実績を積んできた同社は、20年、大きな飛躍のチャンスを手にする。ノルウェー北部のスバルティセン氷河の麓(ふもと)にあるメロイ市に建設予定の世界初のポジティブ・エナジー・ホテル「Svart」だ。

Svartはオーロラ鑑賞ができる北極圏に位置する(写真提供:MIRIS Group)

 気候変動に最大限配慮されたエネルギー設計で、一般的なホテルと比較して年間エネルギー消費量の85%を節約、さらにホテル維持に必要なエネルギーを自ら生み出すという。

 手掛けるのは、アイスランドのツアー会社、アークティック・アドベンチャー(Arctic Adventure)、ノルウェーのデザインスタジオ、スノヘッタ(Snohøetta)、気候変動に対応した建物の開発を行うノルウェーのパワーハウス(Powerhouse)の3社と発表されており、世界初のチャレンジングな試みに加え、北極圏の神秘的なロケーションに緻密(ちみつ)に設計された美しい建築と見どころに事欠かない。

 これだけ話題性のあるホテルであれば複数の競合がいたはずだが、同社が内装設計に抜てきされた理由はどこにあったのか。彼らは2つの理由を挙げた。

 「ノルウェーとデンマークの間には確かに文化の違いがあるものの、人間としての根本的な価値観や自然環境との強い結びつきは共通しています。Svartは自然との密接な接続がコンセプトであり、自然との深い関係性とリスペクトが求められます。それを持っていたことに加えて、私たちデンマーク人が持つ根源的な価値観を専門的な決定の要素に組み込んでいる点に共感が得られたのだと思います。

 もう1つの理由は、幅広く専門的なインテリアのスキルパッケージを持っていること。私たちは長年にわたり、空間設計に家具デザイン、ドアの取っ手などの細かいパーツにいたるまで学習を続け、これらの作業に精通しています。それぞれ設計プロセスは大きく異なりますが、総合的に空間をプロデュースする際に必要とされるスキルだと考えています」(Henriksen氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.