「納豆」はキムチの牙城を崩せるか “日本食”が脅威にさらされているワケスピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2021年02月02日 09時30分 公開
[窪田順生ITmedia]

キムチ人気に対して、日本の「納豆」は……

 もちろん、日本の消費者には「国産キムチ」の方が人気が高いのは言うまでもないが、それでも日本人の「キムチ愛」は目を見張るものがある。実は国内で最も多く作られ、最も多く消費されている漬物は「たくあん」でも「ぬか漬け」でもなくキムチだ。いつの間にやら日本の漬物文化は、ユネスコ無形文化遺産に登録された「韓国を代表する食文化」に侵食されてしまっているのが現実なのだ。

 なぜこうなってしまったのかというと、純粋に食品として日本人の口に合うということもあるが、「免疫力アップ」という要素も大きい。「ざっくり知識だともったいない!! ヨーグルトVSキムチ 腸を元気に!!免疫力UP 本当に良い食べ方SP」(テレビ朝日「林修の今でしょ!講座」20年4月28日)なんてテレビ番組が定期的に放送され、そのたびにスーパーの棚からキムチが消える、という現象がその事実を雄弁に語っている。

 そんなキムチの世界的な成功を耳にすると、やはり気になるのは、同じく「免疫力アップ食品」として、日本の消費者から絶大な支持を集めている「納豆」ではないか。

 「おかめ納豆サイエンスラボ」によれば、納豆市場は、健康志向の高まりなどで2012年から右肩上がりで拡大し、16年から4年連続過去最高の市場規模を記録。19年は2503億円だった。20年1月、国立がん研究センターが「納豆の摂取量が多いほど循環器疾患死亡リスクが低い」との研究成果を発表したことで、テレビはこぞって納豆を特集し、一時期品切れするスーパーもあったことを踏まえれば、20年もこの勢いは継続しているものと思われる。

健康志向の高まりで、納豆の市場規模は拡大しているが……(写真提供:ゲッティイメージズ)

 では、海外ではどうなのかというと、日本ほどではないにしても「静かなブーム」が起きているようだ。20年1月、米国でも「Eat Natto, Live Longer?」(ニューヨークタイムス20年1月29日)という記事が出て、健康意識高い系の人たちの注目を集めた。また、日本食の人気の高いフランスでも、コロナ感染拡大のなかで、免疫力を高めるスーパーフードとして注目されているという。

 ただ、残念ながら、知名度的にも数字的にも、まだキムチの牙城を崩すほどには至っていない。日本でも苦手な人が多い、あの独特の匂いやネバネバな食感が、海外でも普及の障壁となっていて、「体にいいらしいけどムリ」という感じで敬遠されてしまっているのだ。

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