ただ米国による制裁措置が行われれば、ミャンマーは自分たちを助けてくれる国と緊密になる。その国とは、中国だ。11年にミャンマーの軍政が民政移管するまでの軍事政権時代、米国や国連による経済制裁などで経済活動が制限される中、中国が軍政を支えてきた経緯がある。
ミャンマー国民からすると中国は「軍政を支えた国」であって反発も強いが、国軍にとっては自分たちを助けてくれる国だ。人権問題についても文句は言わない。中国側にとっても、ミャンマーは巨大経済圏構想「一帯一路」の要所であるという観点からも取り込みたい。
つまりミャンマーが米国と中国との対立の舞台になる可能性がある。現在すでにミャンマーに進出している日本企業にとっても、考えたくないような展開になる。中国企業などがどんどん入ってくる上に、国軍関連企業などへの経済制裁によって日本企業が行動を制限されてしまいかねない。ミャンマーでは多くの産業で国軍系の企業が幅を利かせているためだ。
だがそんな状況になった場合、実は日本の役割が期待されている。ミャンマーや中国、米国の間で、制裁や対立激化に関連してミャンマー側と交渉できるのは日本だからだ。米国政府はすでに日本にその役割を期待している。
日本とミャンマーの絆は深い。
もともと、日本は第二次大戦時にミャンマーを占領した。だが結局、日本は敗戦。ミャンマーは日本からの占領後に英国の占領地となり、1948年には独立を果たしている。
その際に、敗戦国の日本は、ミャンマーに戦争時の賠償を支払うことになる。またそれ以降、ミャンマーが軍政になろうが(ミャンマーは1962年からと、88年からの過去2回、軍事政権を経験しており、今回も軍政が敷かれると3回目となる)、ミャンマーと中国が近づこうが、米国や国連の経済制裁を受けようが、基本的には、財政支援やODAなどでミャンマーを支えてきた。
それによって、ミャンマーと日本の関係は今に至るまで悪くはない。そういう背景もあったためにミャンマー人は親日である。
それどころか、今回のクーデターでも、日本は軍政側とのパイプを維持しているために、影響力を行使できうる可能性があり、それを米国は期待している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング