スシロー、成長戦略のカギは「キャンペーン」と「特大エビフライ」!? コロナ後を見据えた布石とは飲食店を科学する(3/4 ページ)

» 2021年02月26日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]

B:新業態開発戦略(新規業態×既存商圏)

 これは「新規の業態」を「既存の商圏」で展開していく戦略です。

 1回目の緊急事態宣言下においては、閉店・営業時間の短縮などにより同社の店内利用客数が大きく落ち込みました。しかし、テークアウト&デリバリー部門の20年5月度における売上高は対前年比300%近くにまで飛躍しました。「テークアウト&デリバリーは新業態では無いのでは?」と思われる方も多いかもしれません。しかし、テークアウト&デリバリーは、品質維持やマーケティング手法などの点で、通常の飲食店の店内営業とはノウハウが大きく異なります。実際にテークアウト&デリバリーのノウハウを理解せずに参入して失敗する飲食店は少なくありません。

 コロナ禍の中でも同社はトライ&エラーを繰り返し、ノウハウを蓄積していきました。そして、19年9月には75店舗だったデリバリー対応店舗を、20年9月には199店舗までに拡大させています。さらには、近隣のスシロー店舗で調理した商品を配送するサテライト方式によるテークアウト専門店といった実験も行っています。

 次に「C戦略=新商圏出店戦略(既存業態×新規商圏)」について見ていきます。

C:新商圏出店戦略(既存業態×新規商圏)

 これは「既存の業態」を「新規の商圏」で展開していく戦略です。

 地方や郊外立地でその強さを発揮してきた同社ですが、最近では都市型店舗の展開に積極的に力を入れています。筆者も実際にスシローの都市型店舗を訪れてみました。

 筆者が訪れたのは、都内にあるスシロー大森駅前店。駅前の一等地ではありますが、お店は2階に位置しています。また、店舗入口は1階にあるファミリーマートと隣接しており、あまり分かりやすい場所とはいえませんでした。

 しかし、階段を昇ると平日のランチピークを過ぎた時間でしたが、4組ほどウェイティングのお客さまがいました。

筆者が訪れたスシローの都市型店舗

 席数は73席で、郊外型スシロー店舗の半分以下ですが満席でした。都心型店舗の店内に入って感じたのは「客層の幅の広さ」でした。学生、1人でランチをとっているOL、昼からお酒を飲んでいる中年男性2人組、小さな子どもを連れた母親、カップルなど、あらゆる客層のお客さまが来店していました。

 同社はコロナの影響が残る中においても、21年9月までに6〜8店舗の都市型店舗を新規出店する計画を発表しています。

海外展開にも積極的

 国内では都心型店舗を出店し、新しい商圏に対して成長戦略を描いている同社ですが、同時に海外スシロー事業の本格拡大に向けても着々と準備を進めています。20年9月期における同社の決算説明会資料を確認してみると、コロナの影響を受けながらも台湾に11店舗を新規出店、計20店舗を展開していることが分かります。香港はコロナ禍でもあまり売り上げが落ちておらず、新規に4店舗を出店して5店舗体制としています。シンガポールにおいても3店舗の新規出店を行い、4店舗体制となっています(いずれも20年11月時点)。今後は香港での成功ノウハウをベースに中国大陸への進出も計画しています。

 最後にD戦略=多角化戦略(新規業態×新規商圏)について見ていきます。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.