“見放され世代”を襲う、コロナ禍の非正規切り 今こそ直視すべき「人を育てる」意義河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)

» 2021年02月26日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

コロナ関連の雇い止めは8万8000人

 国が「集中支援期間として3年間で650億円超の予算を確保し、正規雇用者の30万人増を目指す」と発表したのが、20年1月下旬。コロナ感染拡大防止策により、非正規切りが本格化したのが4月。その後も非正規を中心とした雇い止めは続き、コロナ関連の解雇や雇い止めは8万8574人(2月19日時点、厚労省調べ)と報告されています。

 しかし、実際にはさらに多いことは明らかであり、今後はもっともっと増えていくことでしょう。

 その中には多くの40代の氷河期世代が含まれているわけです。「本来であれば景気回復後に適切な就職機会が得られてしかるべきだったが、当時の労働市場環境の下では難しく、不安定就労を続けている」(前述)人たちです。

 たまたま時代が悪かったというだけで、最初の就職のみならず、その後も「不遇」につきまとわれ、まるで泥沼に入り込んだように人生を翻弄され続けている世代です。

最初の就職をはじめ、不安定な就労を続けている人たちがたくさんいる(写真提供:ゲッティイメージズ)

 もし、本気で600億円を投じた氷河期支援をするなら、直ちに非正規雇用の在り方を見直すのが最善策です。

 日本では「非正規だから……仕方がないね」と、非正規の人たちが切られることに鈍感になっていますが、欧州では原則的に非正規などの有期雇用は禁止しています。理由は実にシンプル。有期契約のような不安定な仕事は、人間の尊厳を満たすには十分ではないのです。人間の尊厳のために仕事は必要だし、不安定な状況が続くことは、人の生きる力をすり減らします。

 コラムでも繰り返し書いているように、「企業が必要なときだけ雇用できる」というメリットを企業に与えているのだから、欧州のように、非正規雇用者には不安定雇用手当を支払い、正社員より高い賃金を支払うのが当たり前です。働く人が生きていく上で、仕事ができることと、生活を送るのに十分な収入があることを、法律で担保することが極めて重要なのです。

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