コロナ禍の“映画鑑賞”どう変わる? 激動の「ストリーミング戦争」 Netflixは会員数500万人にほぼ倍増(2/4 ページ)

» 2021年02月27日 13時00分 公開
[将来の終わりITmedia]

 そのNetflixの強さは、何より新作にある。全ての作品が見放題でありシステムがシンプルであることや、劇場公開映画が続々と入ってくる点ももちろんだが、それは他のサービスがもともと備えていた利点である。Netflixがなぜここまで注目されたか? といえば、日本でのサービス開始時にその顔となっていた「ハウス・オブ・カード 野望の階段」があったからだ。「ケヴィン・スペイシーを主演に、デヴィッド・フィンチャーが監督するオリジナルドラマ」というものは、配信サービスのオリジナルタイトルとしては5年前当時、やはり衝撃だった。

 このビッグタイトルをもたらしたのは、Netflixの抱える世界中のユーザーたちの視聴データである。BBC製作ドラマ「ハウスオブカード」、デヴィッド・フィンチャー作品、ケヴィン・スペイシーというプラットフォーム内の人気作の視聴データを元に作り出した座組みから、全話を一気に配信する。Netflixは確実に見られるものを作り出せるデータと、ユーザー側に対するわかりやすさを武器にここまでのし上がってきた。映画、ドキュメンタリー、スタンダップコメディ、アニメーション、そのいずれにも投資を惜しまず、続けられる新作の配信。21年はさらに潤沢な製作陣を元に、週1作品以上を届けると豪語する。先日発表された新作ラインアップトレイラーでは、ガル・ガドット、ジェイソン・モモア、レオナルド・ディカプリオなど、超一流のハリウッド・スターが次々登場。その圧倒的な成功を見せつけた。

 新作といえば、負けていないのがウォルト・ディズニーの展開するDisney+だ。Netflixの新作がほぼ全てオリジナルであるのに対し、Disney+はディズニー・及びピクサーという周知の映画コンテンツを大量に抱え、かつ「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」「スターウォーズ」という歴代興行収入のシリーズ1位、2位を記録する世界最強のIPを抱えている。プラットフォーム内の作品数でいえば他社には及ばないものの、単独で実施できるサービスとしてはこれ以上に強力なものもないだろう。ただし日本ではdocomoとの提携サービスとなっており、画質・サウンド面で大いに劣るのは非常に残念だ。

 Disney+の新作としてまずあげられるのは、新作映画の「ムーラン」。劇場公開が中止となった大作を自身のプラットフォームで配信するという、独自の強みを見せることになった。本作においてはプレミアム作品として追加課金を必要としたものの、ディズニー・ピクサー作品「ソウルフル・ワールド」も劇場公開を断念し、見放題配信が開始された。「2分の1の魔法」についても、劇場公開期間わずか2週間後という短期間で見放題配信を開始(こちらは北米のみ)。劇場公開を前提とした、クオリティーの担保されたディズニー関連作を惜しげもなく投入することで、コンテンツの少なさというハンデを見事に払拭(ふっしょく)してみせた。

 日本ユーザーにおいても爆発的な話題となったのが、スターウォーズスピンオフドラマとなる「マンダロリアン」、そしてMCU最新作となる「ワンダヴィジョン」の2作品だろう。どちらも「シークエル・トリロジー」や「MCU:フェーズ3」を終えてからの初の新作ということもあり特に後者はその人気の高さより、ウイークリーで配信される最新話をいち早く見ようとしたユーザーが、世界各国のサーバを落とすほどの人気となる。

 「シネマティックユニバース」という、一つの世界観を共有する作品において旧作が見放題なのは過去作品を見返すきっかけになり、結果としてサービスの継続につながるはずだ。特に「ワンダヴィジョン」は、「エンドゲーム」後の世界観であるのみならず、「マイティ・ソー」「キャプテン・マーベル」「アントマン&ワスプ」の登場人物を再起用。公開延期が続く「ブラックウィドウ」を控え、再びその世界観に浸るための環境として最適だろう。マーベル作品は他の多くのサービスでは都度課金となっており、そのようなプラットフォームでは難しい視聴体験を与えることで、唯一無二の強みを発揮している。

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