コロナ禍で参加者4倍のオンライン読書会「ペアドク」 サービス責任者に狙いを聞いた「近づけない、集めない」時代を生き抜く、企業の知恵(1/3 ページ)

» 2021年03月03日 12時40分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

「近づけない、集めない」 時代を生き抜く、企業の知恵:

 「人が集まる」「人に直接会う」ことで稼いできた企業が、新型コロナを契機に自社戦略の見直しを迫られている。どのようにして「脱・3密」や「非接触」を実現し、ビジネスチャンスを生み出そうとしているのか。

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 オンライン読書会の「ペアドク」が参加者を伸ばしている。「ペアドク」とは、30分本を読んで、30分感想をシェアするペア読書という読書法に、著者から話を聞き、直接質問ができる機会を加えて発展させたイベントだ。ベストセラー著者が毎回ゲストとして参加していて、これまではプロノイア・グループ代表取締役ピョートル・フェリクス・グジバチ氏やIT評論家の尾原和啓氏をゲストに招いてきた。

リアル書店と電子書籍・通販のハイブリット型総合書店のhontoが主催している「ペアドク」(以下、画像は大日本印刷提供)

 「ペアドク」を主催しているのは、大日本印刷が運営しているリアル書店と電子書籍・通販のハイブリット型総合書店のhontoだ。全国出版協会・出版科学研究所が発表した2020年の出版市場規模は、紙が前年比1.0%減の1兆2237億円、電子が28.0%増の3931億円と大きく伸長した。紙と電子の合算では2年連続のプラスとなっている。印刷会社である大日本印刷が電子書籍の市場にも進出し、新しいビジネスに取り組んでいるのがhontoであり、hontoから生まれた試みが「ペアドク」といえる。

 「ペアドク」はコロナ禍によってリアルのカフェでの開催からオンラインに切り替えたことで、参加者が大幅に増加。Facebookコミュニティーのメンバーも1年間で4倍に増えたという。本の読者を掘り起こす「ペアドク」の狙いについて、企画やコーディネートを担当する松原嘉哉氏に聞いた。

松原嘉哉(まつばら・よしや)ハイブリット書店サービスhontoプロデューサー。大日本印刷出版イノベーション事業部hontoビジネスセンター所属。戦略系コンサルタント、バイオベンチャー立ち上げを経て現職

ベストセラー著者をゲストに

 「ペアドク」の進め方は、普通の読書会とは少し違っている。参加者は事前に本を読んでおく必要はない。まず30分間、テーマになった本を読み、次の30分間で他の参加者と感想や気になったフレーズなどについて語り合う。続いて、読んだ本の著者の話を聞き、気になったことを直接質問できる。これまで参加費用を1000円(税込)程度に設定してきた。

 参加者を増やしている要因は豪華なゲストにもある。山口周氏、ピョートル・フェリクス・グジバチ氏、尾原和啓氏など、ベストセラー著者が毎回参加し、最新刊について対話ができるようにした。これまで参加者が最も多かったのは、2020年5月に山口周氏が参加した回の300人。リピーター候補といえるFacebookコミュニティーの参加者は、20年3月の時点では100人だったのが、1年後の現在は約400人と4倍に増えている。

 「ペアドク」を運営しているhontoは、大日本印刷が丸善ジュンク堂書店、文教堂と共同で運営しているリアルと電子・通販のハイブリット型総合書店だ。「ペアドク」を始めたきっかけは、企画とコーディーネーターを担当しているhontoビジネスセンターの松原嘉哉氏が、個人的に始めたペア読書だったといいう。

 「本を読んで感想をシェアするペア読書は19年初めに開発されたもので、Twitterなどで話題になっていました。面白いと思って個人的に始めたのが最初です。Twitter上で参加者を集めたら数十人のコミュニティーができたので、見せ方次第では世の中に広げられると思い、会社を巻き込きこんでhontoのイベントにしました。

 hontoで開催することのメリットは、丸善、ジュンク堂書店、文教堂など書店とタイアップすることで、著者がゲストとして参加してくれるようになったことですね。現在では毎回著者に参加していただいています」

ベストセラー著者が毎回参加し、最新刊について対話ができるようにした
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