hontoでは「ペアドク」の開催と合わせて、全国の丸善、ジュンク堂書店、文教堂と提携してフェアを開催することもある。「ペアドク」のテーマに選ばれた本を書店で購入すると、ポイントが10倍になり、イベントの参加チケットも半額になる。その際、チケットの売り上げは書店に還元しているという。
「20年7月と8月に尾原和啓さんにゲストで参加してもらったときに、尾原さんから『書店を応援したい』と言いました。そこで、書店でイベントのチケットが売れた場合は、全額書店に還元することにしました。書店にはとってはフェアを開催するモチベーションになりますし、地方の書店でたまたまイベントを知る人もいるのではないかと期待しています」
「ペアドク」を開催することで、本の売り上げにどのように貢献できるのかと聞くと、松原氏は実売だけでなくオンラインならではの効果もあると説明する。
「テーマに選んだ本を読むので、少なくとも参加者の人数分は本が売れます。刊行されている本だけではなく、発売前の本のゲラを読む場合もあります。すると、参加者が『この本のゲラを読んですごく良かった』といった感想をTwitterでつぶやいてくれます。これは著者にも喜んでもらえますね。参加者の実売というよりは、オンライン読書会を起爆剤にして、本の魅力を広げることができればと思っています」
本の魅力が広がって売れるようになることは、「ペアドク」を開催する目的の1つだ。しかし、「ペア読書という読書法が持つ魅力はそれだけではない」と松原氏は語る。
「出版不況と言われますが、活字市場で見ると、電子書籍を入れるとむしろプラス成長になっています。さらにnoteなども含めた活字市場を広く見てみると、ボリュームが増えて、多様化してきたと感じています。
ただ、ワンテーマで数百ページにわたって書いている本が安泰かと言うとそうではなくて、丸ごと一冊読むよりも、文字数の少ないライトな活字にシフトしつつあると思っています。そういう意味で30分しか読まなくていいペア読書は、今に合っている読み方ではないでしょうか。
それに、自分の解釈と相手の解釈をすり合わせるようなコミュニケーションができることも、ペア読書の価値の1つだと考えています。SNSでは毎日炎上が起きていて、言論が分断されていますよね。価値観が違う人たちといかに協力し合うか、協調し合うかは、これからますます重要になるでしょう」
「ペアドク」では生き方や働き方などをテーマにすることが多い。次回3月5日には『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)の著者で、『数えないで生きる』(扶桑社)を刊行した岸見一郎氏をゲストに招く。「立ち止まって自分に大事なことを考える2時間」と題して、年収、貯金、偏差値、新型コロナウイルスの感染者数など、数字に一喜一憂するのではなく、参加者が自分にとって大事なことを考える時間を提供するという。今後の展望を松原氏は次のように語った。
「ペア読書によって本をコミュニケーションの手段にしていく。それがひいては出版市場を広げることにもつながります。そのためにさまざまグループとコラボレーションをしながら、本を読む習慣を広げていきたいと考えています」
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