リテール大革命

無人レジとロボットの導入は、ファミリーマートの店舗をどう変えるのか? 責任者に聞いたデジタル化の現実的な課題(1/4 ページ)

» 2021年03月11日 11時46分 公開
[中西享ITmedia]

 店舗の24時間営業問題で揺れたコンビニ業界。ビジネスモデルの転換は待ったなしの状況になり、生産性向上が求められている。中でも店舗運営上の最重要課題は人手不足の解消だ。

 ファミリーマートは抜本的な解決策として、無人レジの導入やロボットを使った陳列作業などを実施することによって省力化に舵(かじ)を切っている。同社は2020年8月に、Telexistence (東京都港区、以下TX)とともに、遠隔操作ロボット技術を使った新たな店舗オペレーション基盤の構築を目的に、店舗への本格導入に向けた試験運用を始めた。

 この技術によって、作業員は自宅にいながら店舗のロボットを動かすことができ、陳列作業ができる。この作業をこなすロボットはTX製ロボット「Model-T」と「Augmented Workforce Platform (拡張労働基盤)」だ。

ファミリーマートは抜本的な解決策として、無人レジの導入やロボットを使った陳列作業などを実施することによって省力化に舵(かじ)を切っている(以下、ロボットや店舗写真はリリースより)

 加えて無人決済店舗の開発を進めるTOUCH TO GO(東京都港区、以下TTG)とともに、TTGが開発した無人決済システムを活用した無人決済コンビニエンスストアの実用化店舗第1号店を東京都千代田区に3月31日にオープンする。

 無人レジとロボットの導入でファミリーマートはどう変わるのか。同社執行役員の狩野智宏ライン・法人室長に、狙いと今後の店舗展開を聞いた。

狩野智宏(かのう・ともひろ) 1996年にファミリーマートに入社。主に店舗、新業態店舗の開発を行う。2004年には出店施設のライフスタイルに対応した新しいコンビニである「ファミマ!!」ブランドの立ち上げに携わる。現在は、法人企業のファミリーマート店舗、マイクロマーケット省人化店舗の開発及び新業態店舗などの開発を担当する

ロボットは人手不足の切り札

――ロボットと無人レジを導入する決断をした理由は。

 背景としては、人手不足への対応があります。いまはコロナ禍の影響で、身近で気軽に働くことができるコンビニエンスストアへの応募は増えています。ただ、少子高齢化はますます深刻化し、生産年齢人口が減少していることから、店舗を運営する人手の絶対数は足りなくなることは容易に予測できます。加盟店に安心して経営いただくためには、この人手不足の状態を変えていかなければならず、ロボットはその切り札になると考えています。

 まずはレジ決済を自動化することによって、お客さまが無人でレジを通過できるようにしたいと思っています。また人手に頼っていた商品の陳列作業を、遠隔操作ロボットに置き換えることも進めます。この作業をロボットに置き換えられれば、これまで複数人で勤務していた人数を減らすことができ、人にしかできない作業に集中できることから、省人化につなげられます。

無人決済システムを活用した店舗第1号店では商品を手に取り、出口でタッチパネルの表示内容を確認し、支払いをするだけで買い物が完了する(リリースより)

 また、さまざまな事情により働くことが困難な人もいます。TX製ロボット「Model-T」を使えば、自宅からでも遠隔によってロボットの操作ができ、商品の陳列作業などもしてもらえます。いままで働くことが困難だった方にも店舗運営に参画してもらえる仕組みを構築できれば、安定した店舗運営につながると考えます。

――人間がしていた作業をロボットが代替するとどんなメリットがあるのか。

 ロボットを導入したからといって、すぐに人手不足が解決するわけではありません。コンビニの作業は、細分化されていているため、実際の作業時間は15分の場合でも、人を雇用するとなると1時間単位の人件費が必要となることも出てきます。これがロボットであれば、必要な作業時間だけ動けばよいので、効率的な作業ができるわけです。

 具体的にはペットボトル飲料などを棚に陳列する作業などを想定しています。店内にあるロボットを、別の場所から遠隔操作して24時間動かすことができますから、海外からも操作が可能です。商品配送トラックが店舗に到着したら、人がいなくてもロボットが品物を陳列台に並べている。これが最終的な姿になります。

Telexistence 製ロボット「Model-T」
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